
イーサリアムのブロックチェーン上で取引する人が多くなってきたNFT。
2023年に入ってからはビットコインでもNFTが作られるようになり、話題になっています。
ただし、ビットコインで取引されるNFTは「Ordinals」または「Ordinal NFT」と呼ばれており、イーサリアムのNFTとは仕組みも異なります。
この記事では、Ordinalsの仕組みや購入方法、作り方などを解説します。
✅Ordinals = satoshiに番号を付け、画像などのデータを刻み込んだNFT
✅ビットコインのウォレットを持っていなくても、MetaMaskを使ってOrdinalsを購入できる
✅Ordswapなどのプラットフォームを利用すれば、Ordinalsを簡単に作成できる
急成長を遂げているビットコインのNFTについて知りたい方は、ぜひ本記事を読んでみてください。
Ordinalsとは?
(Ordinals)
Ordinalsとは、Ordinal Theory(序列理論)に基づいて作られたNFTです。
Ordinalsが登場するまで、NFTの一般的な形式はイーサリアムのスマートコントラクトを組み込んだものでした。
しかし、Ordinal Theoryが導入されることで、スマートコントラクトを実装できないビットコインのようなブロックチェーンでも、NFTを作成できるように。
Ordinalsが誕生したのはビットコインチェーン上ですが、別のブロックチェーン(ライトコインチェーンなど)にもOrdinalsは広がりつつあります。
個々のsatoshiに順序が定義される
Ordinalsの肝となるOrdinal Theoryは、仮想通貨として取引されているsatoshiに順序を定義する手法です。
satoshiはBTC(ビットコイン)を最も細かくした単位で、1 satoshi=0.00000001 BTC(1億分の1)で換算されます。
Ordinal Theoryでは、これまでに発行されてきたsatoshiのすべてに番号を割り振ることで、資金でしかなかったトークンに唯一性を持たせています。
たとえば、最初に発行されたsatoshiには番号1が、100000000番目に発行されたsatoshiには番号100000000が与えられています。
satoshiにデータが刻み込まれている
satoshiに画像や文字などのデータを関連付けることで、Ordinalsが作られています。
satoshiに関連付いたデータのことをInscription(インスクリプション:直訳すると碑文)といい、関連付けさせることはInscribe(記す、刻む)と表現します。
Inscriptionにも刻まれた順に番号が付けられており、Inscription #1、Inscription #2・・・といった形で表記されます。
基本的に、Inscriptionの番号が小さいほど、Ordinalsに希少価値が付きやすいです。
Inscriptionは確認可能
刻まれているInscriptionがどういったものなのかは、Ordinalsの公式ページで確認できます。
たとえば「https://ordinals.com/inscriptions/0」にアクセスし、最初に刻まれたInscription #0を見てみましょう。
satはsatoshiの番号を表しているので、1252201400444387番目のsatoshiに刻まれているInscriptionであることがわかります。
刻まれた時間を表すタイムスタンプ(timestamp)などの情報も書かれているので、気になるInscriptionを見つけたらチェックしてみるといいかもしれません。
ほかのNFTとの違い
Ordinalsと従来のNFTでは大きく仕組みが異なるため、いくつもの相違点があります。
ここでは、スマートコントラクトを利用したNFTと比べて優れている点を3つ挙げます。
ブロックチェーンでデータが守られている
Ordinalsに刻まれているすべてのInscriptionは、ブロックチェーン上に存在します。
ブロックチェーン上のデータは改変が難しいため、画像データを差し替えられることもないでしょう。
一方、NFTの画像データを置く場所はそれぞれで異なり、制作者が用意したサーバーに保管されるケースが一般的です。
制作者による画像の差し替えや、サーバーの破損などの外的要因によって、もとの画像データが失われるかもしれません。
トランザクションの署名が安全にできる
OrdinalsやNFTを取引する際にはトランザクションへの署名が必要ですが、Ordinalsであれば安全に署名ができます。
なぜなら、Ordinalsを扱うビットコインチェーンには送金機能しかなく、危険な処理をされる心配がないからです。
NFTの場合、悪質なトランザクションに署名してしまうと、ウォレットに入れている資産がすべて抜かれてしまう可能性も。
たとえば、トークンを自由に転送できる権限を渡す「Set approval for all」や、ウォレットの秘密鍵流出の可能性がある「eth_sign」などが危険な署名にあたります。
いつの間にか資産を抜き取られる詐欺にかかりにくいという点では、Ordinalsのほうが優れているといえるでしょう。
希少性が担保されている
OrdinalsはNFTより数が少なく希少であるため、価値が付きやすいです。
数が少ないという根拠は、Ordinalsの作成にはsatoshi(=BTC)が必要という点にあります。
すべてのsatoshiにInscriptionが刻まれてしまえば、それ以上Ordinalsを作成できません。
対して、NFTはメタデータを作成するだけなので、無尽蔵に生成できます。
1種類のNFTを数千、数万と作ることも可能なので、NFT全体の価値が低くなりやすいでしょう。
Ordinalsのプロジェクト例
Ordinalsの具体的な例として、最初期に作られた3つのプロジェクトを紹介します。
すでにイーサリアムで公開されているNFTを模したプロジェクトも多いですが、ビットコイン特有のプロジェクトも公開されています。
Ordinalsの開発が進むにつれて、独自のプロジェクトが増えていくでしょう。
Ordinal Punks
イーサリアムの最初期に作られたNFTプロジェクト「Crypto Punks」の影響を受けているプロジェクトです。
100個の画像が作成され、いずれのInscriptionも650番以内に刻まれています。
Ordinal Punksのinscription #620が9.5BTC(約3935万円)で売れたことが話題となりました。
ちなみに、Crypto Punksの画像1万点をそのまま刻んだプロジェクト「Bitcoin Punks」が別に存在します。
Bitcoin Rocks
(Scarce City|Bitcoin Rock #35)
イーサリアムのNFTプロジェクト「Ether Rock」を模倣して作られたプロジェクトです。
Inscriptionは250番以内に刻まれており、ビットコインで最初のコレクションとなっています。
Inscriptionの番号が小さいほど希少価値が高くなりやすいため、時間とともに価値が大きく上昇する可能性が高そうです。
Taproot Wizards
(https://www.taprootwizards.com/)
2013年にmavensbot 氏によって生み出されたイラスト「Bitcoin Wizard」をモチーフにしたプロジェクトです。
Bitcoin Wizardはビットコインチェーンのマスコット的な存在として知られており、ビットコインの大規模コミュニティであるr/Bitcoinのメンバー増員に貢献しました。
そんなBitcoin Wizardをもとに、ブロックチェーン開発者であるUdi Wertheimer 氏が2121点ものInscriptionを作成して作られたのが、Taproot Wizardsです。
なお、Taproot Wizardsの制作には、Bitcoin Wizardの生みの親であるmavensbot 氏も関わっています。
購入できるマーケットプレイス
Ordinalsを購入したくなったら、ここで紹介するマーケットプレイスを利用するとよいでしょう。
MetaMaskを利用して購入できるマーケットプレイスもあるので、いままでビットコインに触れたことがなくても利用できます。
なお、Ordinals自体が2023年に登場したばかりなので、利用していると不便に感じる部分があるかもしれません。
どのマーケットプレイスも使いにくいようであれば、機能が充実するまで利用を見送るのもよいでしょう。
また、イーサリアムのNFTマーケットプレイスと同様、偽物も多数出回っている点に注意してください。
Ordinal Wallet
ウォレットを作成できるプラットフォームでありながら、Ordinalsの取引にも対応しています。
ウォレットを作成する手順は、パスワードを設定して秘密鍵をメモするだけ。
これからOrdinalsを扱い始める人にうってつけのマーケットプレイスといえるでしょう。
Ordswap
Ordinalsの作成や売買ができるプラットフォームです。
MetaMaskを接続することでビットコイン用のウォレットアドレスが自動的に発行され、Ordswap上で管理できます。
もしMetaMaskを持っていなくても、Ordswap上で即座に発行できるウォレットキーを入力してウォレットを利用可能です。
ordinals.market
Emblem Vaultというサービスを利用して、Ordinalsが入っているウォレットの秘密鍵を売買しているマーケットプレイスです。
秘密鍵はVaultという形でイーサリアムのNFTになっており、秘密鍵を確認するとVaultが焼失する仕組みになっています。
秘密鍵を確認しなければVaultのまま取引できるので、イーサリアムチェーン上で秘密鍵を売買するのもよいでしょう。
Ordinalsを自分のものにしたい場合の難点は、Vaultに入っている秘密鍵を確認したり、秘密鍵をウォレットにインポートしたりする手間がかかります。
Binance NFT(2023年6月1日追記)

(Binancs NFT)
Binance NFTは、大手仮想通貨取引所のBinanceが提供するNFTマーケットプレイスです。
2023年5月8日、Ordinalsに対応することを発表しました。
これによりBinancsユーザーは、ビットコインウォレットを用意することなくOrdinalsを売買できます。
(Binancs公式|Ordinalsをサポート)
Binancs NFTでは、ビットコインNFTプロジェクトとコラボしていくとのこと。
また、2023年5月9日〜15日の間には「ユーザーアンケートを実施するイベント」も開催されました。
イベントに参加したユーザーには、エアドロップやホワイトリストなどの限定特典も付与される予定です。
なお、対応時期はまもなくとのことですが、2023年6月1日時点では対応されていないので注意してください。
Binancs NFT Discordに参加するとOrdinalsについての最新情報が得られます。
Ordinalsを作成する方法
自分のOrdinalsを作成したいのであれば、OrdswapやGammaなどのプラットフォームを利用すれば簡単に作れます。
以前はOrdinalsを作るために専門的な知識が必要でしたが、プラットフォームを利用した作成方法では画像をアップロードして手数料を支払うだけです。
イーサリアムでNFTを作るのと同じくらい簡単なので、Ordinalsの作成に興味があればぜひ挑戦してみてください。
ここではOrdswapを利用した作り方を解説しますが、Gammaでも同様に作成可能です。
刻み込むデータを選択する
Ordswapのメニューにある「Inscribe」をクリックすると、Ordinalsにするデータをアップロードする画面になります。
画像や音楽、動画だけでなく、テキストや文書ファイルもアップロード可能です。
ファイルサイズの上限は1024KBなので、ファイルサイズが大きすぎる場合は圧縮ツールなどを使って小さくしましょう。
なお、「Collection mint live!」ボタンを押せば、複数のデータを一度にアップロードできます。
手数料を選択する
データをアップロードすると、Ordinalsを作成するのに必要な料金が表示されます。
安いほど作成にかかる時間が長くなり、場合によっては数日かかることも。
なるべくデータサイズを小さくして、Ordinals作成にかかる料金と時間を抑えましょう。
手数料を送金する
料金を選択して「Pay & Inscribe」ボタンを押すと、料金の支払先が表示されます。
ビットコインのウォレットを使い、支払先へ指定された量のBTCを送金しましょう。
1時間以内に送金できなかった場合、注文はキャンセルされます。
作成したOrdinalsを受け取る
支払いが完了すると、アップロードしたデータのInscribeが始まります。
注文時に「Ordinals Address to Receive Inscription (optional)」の入力欄にOrdinals対応のウォレットアドレスを入力していれば、自動的にOrdinalsが届くでしょう。
アドレスを入力していなかった場合、ウォレットを取得してから注文IDを入力することでOrdinalsを送信してもらえます。
Inscribe画面の下の方にオーダーIDが表示されているので、忘れないよう注文時のIDを書き留めておいてください。
Ordinalsの将来性
Ordinalsは、登場して数ヶ月という短期間で急激な成長を続けています。
いずれイーサリアムのNFTを超える可能性もあり、将来有望であるといえそうです。
将来性の根拠となる3つのポイントを解説していくので、Ordinalsへの参入を検討しているのであれば参考にしてみてください。
ビットコイン愛好家の保有が望める
いままでビットコインだけ利用していた資産家でも、Ordinalsであれば保有する可能性があります。
ビットコインにはイーサリアムよりもはるかに高額な価値が付いており、流動性はイーサリアムを大きく上回っています。
ビットコインでOrdinalsが広まり、保有する資産家が増えれば、現状のNFTをしのぐ大きな市場の開拓が期待できそうです。
Web上で広く利用される可能性も
Inscriptionは、Webで使用されているのと同じデータモデルである、MIMEタイプで構成されています。
そのため、Webブラウザーでサポートされているコンテンツをサポートしやすくなるとのことです。
OrdinalsとWebアプリを連動させる技術が確立すれば、現状よりもNFTをサービスに組込みやすくなるでしょう。
反対する意見もある
Ordinalsを好意的に捉える人は多いですが、導入に反対する意見もあります。
その理由として、以下のような理由が挙げられます。
・ビットコインは金融取引にのみ利用されるべき
・NFTがブロックチェーンを混雑させるため取引手数料の上昇に繋がる
こうした思想によりOrdinalsが広まらない将来もありえるため、今後どうなるかを知るために情報はつねに確認していくとよいでしょう。
(参考)CoinPost|史上最大4MBのビットコインNFTがミント、コミュニティは賛否両論
まとめ:Ordinalsにも触れてみよう
登場した当時は専門知識がなければ扱えなかったOrdinalsも、現在ではマーケットプレイスやウォレットを利用して簡単に取引できるようになりました。
ビットコインを用意すれば自分のOrdinalsを作成することもできるので、試しにOrdinalsを作ってみるのもよいでしょう。
今後イーサリアムのNFTにも影響を与える可能性が高いので、NFTだけでなくOrdinalsについても情報のアンテナを広げてみてください。