2023年暗号資産税制改正でどう変わったか?現状の課題も検証

近年、ビットコイン等暗号資産は身近なものとなってきました。

今回は、2023年、暗号資産にかかる税制改正、そして、暗号資産税制の現状の課題などを浮き彫りにしていきます。

この記事のザックリ要約!
  • 2023年暗号資産税制改正がおこなわれた!
  • 暗号資産に関する税制に課題は多い!
  • 日本の暗号資産税制は諸外国と比較して遅れている
  • アメリカ、イギリスでの暗号資産税制は充実している!

2023年税制改正で暗号資産の税制はどう変わったか?

2023年税制改正では暗号資産にかかる税制改正がおこなわれました。大きな変更点は、以下のとおりです。

大きな変更点

暗号資産を発行している企業の自社保有分について一定の要件を満たすものは、期末評価課税の対象外とする

日本の法律では、法人が暗号資産を所有している場合、決算期末に含み益があると「期末評価課税」として課税されます。

それは、自社が発行する暗号資産も同様です。自社が暗号資産を所有して、期末に含み益があると、納税のために自社の暗号資産を売却して現金化することが想定され、マーケットに影響が出ます。そして、この税制から逃れようと日本国内で暗号資産を発行する企業が現れなくなる恐れもあります。

それらの不安の一部が解消されたものが、2023年の税制改正なのです。

現状の暗号資産税制に対する課題

暗号資産に関する税制には課題があるようです。どのような課題があるのでしょうか。詳しく検証していきましょう。

法人税は含み益に課税される

法人が暗号資産を所有している場合の法人税には、所有する暗号資産が決算期末に含み益を有していた場合、その含み益に対して課税されるという課題があります。

例えば100万円である暗号資産を購入し、決算期末に300万円に上昇していた場合、差額の200万円に対して課税されるというものです。

100万円購入→決算期末には300万円に
=差額の200万円が課税対象

これが株式や投資信託の場合だと、帳簿には「有価証券評価益」という項目で含み益が掲載されるだけで、課税まではされません。暗号資産は、それらの有価証券とは異なる扱いとなっているのです。

【株式・投資信託と暗号資産の含み益・売却益に関わる法人税の取扱い】

決算期末含み益売却益
株式・投資信託課税されない課税される
暗号資産課税される課税される

暗号資産は総合課税

暗号資産は総合課税ですが、通常の株式では分離課税が採用されています。株式と暗号資産では、以下のような違いがあります。

課税区分課税所得が高くなると繰越控除
株式分離課税税率上がらないあり
暗号資産総合課税税率上がるなし
暗号資産の場合

税区分:雑所得(総合課税なので、増えれば増えるほど税金も高くなる)
上場株式の損失分を3年間繰り越す「繰越控除」が認められていない。

個人が暗号資産を売却して利益を得た場合、課税の分類は「雑所得」となります。雑所得は、給与所得などと合算される「総合課税」という課税区分です。

総合課税は、課税所得が高くなるほど税率が上がる「累進課税」が採用されています。暗号資産の売却益は給与所得などと合算されて、課税所得が増えると税率が上がる可能性があり、それに伴い税金も増えていく仕組みです。

株式の場合

税区分:譲渡所得(分離課税なので、税率は一定)
上場株式の損失分を3年間繰り越す「繰越控除」が認められている。

一方、株式を売却して利益を得た場合は「譲渡所得」となります。譲渡所得は、他の所得とは合算されません(分離課税)。分離課税は、課税所得が高くなっても税率は一定です。そのため、いくら株式で大きな利益を得ても税率は上がりません。

そしてさらに、上場株式等の損失分を3年間繰り越すことができる「繰越控除」が認められているのです。たとえば、今年、株式売却で50万円の損失が出たとします。そして翌年、株式売却で30万円の利益が出たら、前年の損失分のうち30万円を繰り越して相殺することにより、課税所得は0円となります。

繰越控除の例

今年:株式売却で50万円の損失
翌年:株式売却で30万円の利益

前年の損失分のうち30万円を繰り越して相殺可能(課税所得は0円に)

その翌年も株式売却で30万円の利益が出たら、前々年の損失のうちから、残りの20万円を繰り越すことで課税所得を10万円にすることができるのです。そのような制度は、暗号資産にはありません。

外国の暗号資産税制は?日本の税制との比較

日本の暗号資産税制には、大きな課題があることがわかりました。では、外国の暗号資産税制はどうなっているのでしょうか。日本の税制と比較しながらみていきましょう。

アメリカ、イギリスと日本の暗号資産税制比較

アメリカとイギリスの暗号資産税制は日本のものとどう異なるのでしょうか。比較してみましょう。

【日本、アメリカ、イギリスの暗号資産税制比較】

課税区分税率繰越控除
日本総合課税最高税率45%なし
アメリカ1年以下の保有・・・短期キャピタルゲイン税最高37%損失額3,000ドルを上限に3年間繰越可能
1年超の保有・・・長期キャピタルゲイン税最高20%
イギリス事業活動とみなされる場合、所得税最高45%4年間の繰越可能※事前に歳入税関庁に報告必要
個人投資とみなされる場合、キャピタルゲイン税最高20%

外国の税制は分離課税

日本と同様、金融の先進国であるアメリカ、イギリスの暗号資産の税制を上記で比較してみましたが、諸国は、暗号資産での利益はキャピタルゲイン税という分離課税が採用されています。

アメリカ、イギリスともに総合課税では日本と同様に累進課税制度を採用しています。その中で暗号資産は累進課税が採用されない分離課税である点は日本のとは大きく異なります。

外国の税制では繰越控除がある

アメリカ、イギリスの暗号資産にかかる税制では繰越控除が可能です。アメリカでは上限額がありますが3年間、イギリスでは監督官庁への報告が必要ですが4年間繰り越せます。

一方、日本の暗号資産は損失が出ても繰越控除の制度はありません。

まとめ

今回は、暗号資産の税制についてみていきました。現状の暗号資産税制は、株式や投資信託と比較すると所有者に非常に不利な税制になっていることがわかりました。そして、それだけではなく諸外国と比較しても厳しいものとなっています。

現在、暗号資産は、世界的にはメジャーなものになってきており、中には法定通貨として採用する国もあるほどの立ち位置になってきています。日本の税制は少し時代に遅れている感じが否めません。今後、どういった税制になるのかを見守っていきましょう。

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