2020年頃から注目され始めたメタバースは、ビジネスにも導入されるようになりました。
大手企業が導入している事例もあり、メタバースでのビジネスに興味のある企業も多いでしょう。
この記事では、メタバースを活用したビジネスのメリットやビジネスモデル、事例などを解説します。
✅業種を問わずメタバースを導入している企業が増えている
✅メタバースを利用することで、物理的な制限なくリアルなサービスを提供できる
✅メタバースの導入にはコスト面や法律面などの問題点もある
メタバースを導入する必要性やできることを知りたい方は、本記事を参考にしてみてください。
そもそもメタバースとは
平たく言えば、メタバースとは仮想世界のことです。
仮想世界ではユーザーの分身となるアバターを操作し、ほかの人とコミュニケーションをとることができます。
基本的に、VRゴーグルを利用して参加する3D(立体)空間をメタバースと呼ぶことが多いです。
ただし人によってメタバースの定義が異なるため、VRゴーグルを用いなかったり、2D(平面)空間であったりしても、メタバースと呼ばれる場合があります。
メタバースでビジネスを始めるのであれば、顧客に誤解されないよう詳細を理解してもらうように注意しましょう。
さまざまな分野の企業が導入している
2022年時点で、すでに大小さまざまな企業がメタバースをビジネスに導入しています。
大手企業の例としては、Meta(旧Facebook)社やNTTドコモ社、KDDI社などが挙げられます。
ほかにも、ファッションや不動産、小売など、あらゆるジャンルの業界がメタバース上でサービスを展開しています。
もともとメタバースの展開が盛んだったゲーム業界なども含め、導入されたケースを列挙していくとキリがありません。
導入をサポートするサービスが登場している
自社にメタバースを作成できる技術者がいなくても、メタバース構築サービスを利用すればメタバースを導入できます。
法人向けのサービスを利用することで、企画段階からサービス提供後まで、しっかりサポートしてもらいながら開発することが可能です。
また、自社で開発しなくても、すでに展開しているメタバースサービスを利用する方法もあります。
1から開発するのが難しかったり、長期的に運用するつもりがなかったりする場合は、既存のメタバースで土地をレンタルしてサービスを展開するとよいでしょう。
DX関連の補助金を申請できる見込みがある
自社独自のメタバースを構築するのであれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連した補助金や助成金を申請できる可能性が高いです。
DXとは、デジタル技術を社会に浸透させることで人々の暮らしを豊かにする変革を指した言葉です。
経済産業省によってDXが推進されており、施策の一環として補助金の交付もおこなわれています。
メタバースの導入は「IT導入補助金」や「事業再構築補助金」の対象となる見込みがあるので、これらの補助金への申請も考慮してみるとよいでしょう。
メタバースを導入するメリット
メタバースに触れたことがない人にとって、メタバースを導入することにメリットを感じるのは難しいかもしれません。
しかし、メタバースでのサービスを正しく提供することができれば、通常のオンラインサービスでは得られないメリットがあります。
ここでは、ホームページなどでおこなうオンラインサービスと比べて優れているメリットを4つ紹介します。
オンラインコミュニケーションの幅が広がる
メタバースを利用すれば、文面だけでは伝えられないオンラインコミュニケーションができるようになり、表現に幅が広がります。
たとえば、身振り手振りで意思を伝えたり、音声チャットで話したりできます。
ビデオ通話と違ってそこにいるようなライブ感があるので、多人数とのコミュニケーションや移動しながらの説明などもしやすいです。
メタバースを開発して機能を追加していけば、コミュニケーションの幅をさらに広げることもできるでしょう。
イベントやセミナーを効率的に開催できる
一度メタバースを構築できれば、会場の予約・セッティングをせずにイベントを実施できる点もメリットです。
同じ内容で繰り返しおこなうセミナーのような内容であれば、リアルの会場を確保するより効率よく開催できるでしょう。
参加者は家にいながらアクセスできるので、イベントの時間が夜であっても問題ありません。
工夫しだいでは、メタバースとリアルの両方でイベントを開催することもできます。
世界中にリーチできる
インターネットが繋がっていればメタバースにアクセスできるので、どれだけ離れた場所にいる相手でもリーチできます。
サービスや商品をリアルで見せるのが難しくても、メタバースで再現して提供することが可能です。
うまくメタバースに落とし込むことができれば、ビデオ通話や動画にはないリアリティをもって魅力を伝えられるでしょう。
新たなビジネスを展開できる
メタバースを活用することで、リアルの店舗や市場だけでは実現できない新たなビジネスを展開しやすくなります。
新しいビジネスの最たる例として、仮想通貨やNFTを利用したサービスが挙げられます。
仮想通貨を使ったNFTの取引はメタバースと相性がよく、海外で展開するメタバースの多くはNFTが取り入れられています。
メタバース構築サービスによってはNFT作成もサポートしてもらえるので、興味があれば相談してみるとよいでしょう。
NFTに限らず、デジタルデータのやり取りをスムーズにできる点もメタバースの強みです。
メタバースを利用したビジネスモデル
メタバースを利用したビジネスモデルは、大きく分けると下記の4つになります。
・マーケティングの導線として活用する
・メタバース内で自社製品を販売する
・作成したメタバースを利用してもらう
・メタバースそのものを提供してコンテンツを販売する
それぞれのビジネスモデルについて、以下で詳細を見ていきましょう。
イベントや広告でビジネスの導線を作る
メタバースでイベントをおこなったり広告を出したりすることで、新しいユーザー層を呼び込む導線を作れます。
たとえば、セミナーを開いて自社の商品を説明したり、ライブイベントを開催して集客したりする方法が考えられるでしょう。
また、リーチしたい対象によっては、通常のWeb広告よりも、メタバース内に広告を出すほうが刺さりやすいです。
これらの手法は自社のメタバースを作成しなくても実施できるため、比較的取り組みやすいビジネスモデルといえるでしょう。
自社製品を展示して販売する
メタバース内に商品の見本などを展示し、自社製品を販売することもできます。
商品の3Dモデルを精巧に作り込めば、リアルのように商品の見た目や大きさを伝えることが可能です。
とくに自動車や不動産、家具のように、リアルで商品を比較するのが難しい商品においてはメタバースが重宝するでしょう。
また、これから開発する予定の商品のイメージモデルを共有したり、シミュレートしたりするのにも向いています。
ちなみに、メタバース上で商品を販売することを、メタバースコマースまたはメタコマースという場合もあります。
メタバースを利用してもらう
自社でメタバースを開発し、ユーザーや他社に利用してもらうビジネスモデルです。
利用してもらう際にレンタル料や利用料をもらえば、少ない労力で収益を得ることもできるでしょう。
例を挙げると、以下のようなサービスがあります。
・舞台や演出を作成してライブステージを提供する
・展示場を開発してイベント会場として提供する
・観光地や名所を再現して体験スポットを提供する
・バーチャルオフィスを開発してレンタル会議室を提供する
繰り返し利用してもらえる仕掛けを組み込み、長期間使われ続けるメタバースを目指すとよいでしょう。
レンタルしてくれる顧客がいなくても、自社のコンテンツを発信する場として利用できます。
メタバースゲームを展開する
メタバースを作成するために使用するツールはゲーム開発にも使えるので、メタバースゲームを作るのも1つの手です。
メタバースゲーム内で活用できるアイテムや装備品、土地などのコンテンツを販売することで収益化を狙えます。
ゲームのプレイ料や入場料として課金することもできますが、なにかしらの強みがない限り有料ゲームでは利用者が増えにくいでしょう。
メタバースの利用者が増えればコンテンツの価値も上がりやすくなるため、いかにして利用者を増やすかが重要となってきます。
メタバースのビジネス活用事例・成功例
前述したとおり、さまざまな業種でメタバースが利用されているため、活用事例を挙げるとキリがありません。
日本で提供されているメタバースサービスを下記の表にまとめていますが、まだまだほんの一部です。
ジャンル・業界 | サービス名 |
メタバース業界 | cluster、VRChat、Vket など |
ゲーム業界 | FORTNITE、The Sandbox、Roblox など |
小売業界 | 三越伊勢丹、ZOZO、ニトリ など |
音楽業界 | ソニーミュージック、ぴあ など |
ファッション業界 | BEAMS、アダストリア など |
広告業界 | 博報堂、電通 など |
建設業界 | 大和ハウス、東急住宅リース、奥村組 など |
製造業界 | 日産自動車、川崎重工、旭化成 など |
医療業界 | アステラス製薬 など |
観光業界 | ANA、大日本印刷、あしびかんぱにー など |
金融業界 | みずほ銀行、SMBC日興証券 など |
ここでは、メタバースを活用したビジネスの事例のうち5つをピックアップして紹介します。
cluster
(cluster)
cluster(クラスター)は誰でもメタバースを作成できるプラットフォームで、100万人を超えるユーザーが利用しています。
cluster内で公開されているメタバースは「ワールド」と呼ばれており、個人で公開している無料ワールドから企業の有料ワールドまで多種多様です。
イベントに参加するための有料チケットや、ワールド内で利用できる「Vアイテム」を販売して収益を得ています。
また、法人向けサービスとして、イベントのコンサルティングや広告出稿もおこなっています。
REV WORLDS
REV WORLDSは、百貨店を経営している三越伊勢丹ホールディングス社が提供するメタバースプラットフォームです。
スマートフォンのアプリから利用でき、フレンドや店員と会話しながらメタバース上でショッピングを楽しめます。
三越伊勢丹の本店を模したメタバースだけでなく、東京ドームや地下闘技場といったユニークなメタバースもあります。
リリースされた2021年から利用者数は増えており、70〜80代の客層にも利用されているようです。
(参考)MarkeZine|メタバースなのに行列?三越伊勢丹「REV WORLDS」に見る、アナログ的な体験の価値
バーチャルマーケット(Vket)
メタバース参入コンサルティングなどを事業としているHIKKY社では「Vket」と呼ばれるメタバースサービスを提供しています。
さまざまなサービスが提供されていますが、なかでも有名なのは年に2回開催される「バーチャルマーケット」です。
2018年から始まったバーチャルマーケットは年々参加ブースが増加し、1443個のブースが出展した2021年にはブース最多数のギネス記録に認定されました。
出展した企業には、三越伊勢丹ホールディングス社やセブン&アイ・ホールディングス社、TOHOシネマズ社などの大手企業も。
なお、バーチャルマーケット以外にも「ComicVket」などのイベントが開催されています。
FORTNITE(フォートナイト)
(フォートナイト)
2017年にリリースされた、建造しながら戦うのが特徴的なTPS(三人称視点のシューティング)ゲームです。
リリース当初は100人で対戦するバトルロイヤルゲームでしたが、2018年12月に追加されたクリエイティブモードで独自のメタバースを作成できるようになりました。
ゲーム内でライブイベントが実施されることもあり、過去に米津玄師 氏や星野源 氏、BTSなどが出演したこともあります。
2020年4月にトラヴィス・スコット氏がライブを開催した際には、1230万人のプレーヤーが集まり、グッズ販売によって2000万ドル(約22億円)もの売上を出しました。
BREAKINGDOWN×XANA(2023年6月14日追記)
(PRTIMES|BREAKINGDOWN×XANA)
Web3.0型メタバースXANA(ザナ)と、格闘技エンターテイメントのBREAKINGDOWN(ブレイキングダウン)がコラボレーションをしました。
メタバース上でアバターで戦えるコラボNFTを販売し、リアル会場ではXANAがBreakingDown 7.5のメインスポンサーに就任。
コラボNFTは、すべて1点もののジェネラティブアバター。
XANAメタバース上にブレイキングダウンアリーナが建設され、プレーヤーはNFTのアバターとなり戦い合うことができます。
BreakingDownに出場した選手のコラボアバターも販売されました。
セール第一弾は、ALを獲得したユーザー向けに2023年3月28日から31日まで予約販売を、通常販売は2023年3月31日におこなわれた。
セール第二弾は、LINE NFTにおいて2023年4月15日におこなわれました。
クリプトウィンター(冬の時代)といわれ、NFT市場が下落しているなか、セール第一弾では5000枚が10分で完売。
その後のセール第二弾では100枚が1分で完売し、期待が高まっている。
上記コラボレーションをきっかけに2023年4月25日、XANAの日本における事業拡大プロジェクト「XANA JAPAN」のCEOにBreakingDown株式会社COO/国内代表、株式会社BACKSTAGE代表取締役 溝口勇児氏が就任。
(PRTIMES|XANAJAPAN CEOに溝口勇児氏が就任)
ミッションは「すべての人に、もうひとつの居場所ともうひとりの自分を」
=すべての人がメタバース空間やアバターを使い、現実社会での孤独・退屈・不安をなくしたい
とXANAを開発するNOBORDERz CEO RIO氏との対談で語っています。
XANA JAPANでは、国内におけるXANAの事業拡大に取り組み、様々な日本の企業やインフルエンサーとのコラボレーションをおこなう。
世界No.1のユーザー数、クリエイター数、経済圏、時価総額を持つWeb3.0メタバースとなることを目指しています。
法人でメタバースを導入する際の注意点
ここまでの解説を読んで、すぐにでもメタバースを導入したいと考えている方もいるでしょう。
ただ、メタバースを導入することでビジネスチャンスを拡大できますが、注意すべき点もあります。
導入するのが逆効果となるケースもありえるので、以下の注意点をよく読んでからメタバースを検討しましょう。
VRデバイスの普及には時間がかかる
VRゴーグルなどのデバイスを利用するユーザーは増えつつありますが、それでも一般的に浸透するにはまだまだ時間がかかるでしょう。
数万円かかるVRデバイスは購入するハードルが高めで、装着するにも手間がかかるため、毎日利用し続けるユーザーはそれほど多くありません。
VRデバイスを利用したユーザーの少なさは、VRデバイスがなくても利用できるメタバースが多い点からも伺えます。
現状でメタバースのサービスを提供するのであれば、なるべくVRデバイスが無くても利用できるようにするのが望ましいでしょう。
コストや手間がかかる
法人でメタバースを導入する場合、個人のように無料で作成するとはいかないでしょう。
とくに、メタバースについての知識がない状態であれば、コンサルティングなどのサービスも利用する必要性が出てきます。
自社で開発するとしても、数ヶ月や数年といった単位で時間と手間をかける必要があります。
コストをかけたものの鳴かず飛ばず……となる可能性もありえるので、有識者の意見を交えながら慎重に検証してください。
法律の問題がある
メタバースに関する法整備が整っていないため、発生する問題は運営が対応しなければなりません。
法律が関わる問題として、以下のようなものが挙げられます。
・リアルに存在する知的財産や人物の再現・アバター化
・デジタルアイテムの物体化
・アバターのなりすまし
・アバターに対する誹謗中傷・迷惑行為
内閣府でも「経済財政運営と改革の基本方針2022」などで、メタバースやNFTに対する法整備や政策を進める姿勢を見せていますが、実現するのは先の話です。
プログラムで行動を制限したり、ルールを提示したりするといった対策をとり、法的なトラブルが発生しないよう努める必要があるでしょう。
ハッキングのリスクがある
メタバースで仮想通貨やNFTを扱う場合、ハッキングによって資産が奪われないよう注意してください。
ウォレットから資産を抜き取られるだけでなく、メタバースを改ざんして不正サイトへ誘導するケースも考えられます。
また、仮想通貨やNFTの知識を持たないユーザーが、なりすまし行為で資産を奪われるかもしれません。
これらの問題が発生してしまうと企業の信用問題に関わるので、メタバースを公開する前にとれる対策を考えておきましょう。
まとめ:メタバースでビジネスを広げよう
遠く離れているユーザーにリアルな商品を提供したり、コミュニケーションをとりながらコンテンツを販売したりするのに、メタバースが向いています。
NFTとの相性もいいので、新しい販売方法や技術を取り入れてビジネスをしたいのであれば、メタバースの活用を視野に入れるとよいでしょう。
自社のビジネスにメタバースを導入できるか判断がつかない場合は、メタバース事業のコンサルティングサービスなどで相談できます。
メタバース構築サービスの一環として相談を受け付けている企業もあるので、こちらの記事で紹介しているサービスもチェックして検討してみてください。