「DAODAO」を使ったDAOシステムの作成方法を解説

仮想通貨やNFTの世界では、DAO(自律分散型組織)で運用しているプロジェクトが増えつつあります。

そんなDAOはブロックチェーンが関わっているため作るのは難しそうだと思われるかもしれませんが、じつはDAOを作成するサービスを利用すれば個人でも簡単に作成できます。

この記事では、DAO作成サービスの1つである「DAODAO」を使ってDAOの投票システムとガバナンストークンを作成する方法を解説しています。

この記事をざっくり要約!

  • DAOに必要な投票システムをDAODAOで作ることができる
  • DAODAOを利用するにはKeplrウォレットとJunoトークンが必要
  • DAODAOではガバナンストークンや提案をノーコードで作成することが可能

DAOの作り方や使い方を確かめてみたい方は、本記事を参考にすれば難なくDAOを作り上げることができるでしょう。

※2022年7月時点でDAODAOはベータ運用中のため、今後仕様や内容が変更される可能性があります。

[冒頭定型文 ]

DAOに必要なもの

DAOはまだまだ馴染みが薄い考え方なので、DAOを作るために何が必要なのかわからないという方が多いでしょう。

DAOを成立させるには、以下に挙げる5つの要素が不可欠です。

  1. DAOを作る目的
  2. 投票するシステム
  3. 投票権利を証明するもの(ガバナンストークンなど)
  4. コミュニティ
  5. 資金

これらの要素がなぜ必要なのか、以下で1つずつ解説していきます。

1.DAOを作る目的

当然に思われるかもしれませんが、DAOには目的が必要です。

目的が定まっていなければ提案される議題は方向性を持たず、1つの組織として機能しなくなるでしょう。

DAOによって実現したい目標をメンバーと共有するためにも、人に伝わりやすい目的をあらかじめ決めておいてください。

たとえば「〇〇のプロジェクトを成功させる」「〇〇の売上を◯◯%向上させる」などの目的が考えられます。

2.投票するシステム

DAOは投票によって意思決定するため、投票できるシステムを用意しなければなりません。

投票が公正におこなわれていることを証明するのが、ブロックチェーンの仕組みです。

スマートコントラクトを見れば投票のメカニズムが一目瞭然なので、不正の有無を調べることが可能です。

こうした投票システムは、DAO作成サービスで用意されているものを利用したり、自分でコーディングして作成したりできます。

3.投票権利を証明するもの

システムに登録されたユーザーが投票できるようにすることも可能ですが、投票する権利の証となるトークンを配布するのが一般的です。

DAOに投票する権利を示すトークンのことを、ガバナンストークンと呼びます。

流動性のあるガバナンストークンは仮想通貨取引所などで売買することも可能で、保有しているガバナンストークンが多いほど投票による影響力が大きくなります。

また、エアドロップ(無料プレゼント)や割引サービスなどの特典が付けられたガバナンストークンも存在します。

4.コミュニティ

投票システムとは別に、ユーザーが交流できるコミュニティも欠かせません。

なぜなら、より優れたDAOを形成するには多くの人を集める必要があるからです。

ユーザーの意思確認や経過報告を密にすることで、コミュニティの信頼性が高まり、DAOの規模を拡大できるでしょう。

コミュニティメンバーの協力によって、初期メンバーでは実現できなかったプロジェクトを展開できる可能性もあります。

5.資金

経済的な活動をするDAOであれば、投票で決められた内容を実行するために使う資金を用意する必要があります。

DAOを作成するときに資金がなければ、クラウドファンディングなどを利用してお金を集める方法をとることも可能です。

そのためにも、DAOの目的やコミュニティが重要だといえるでしょう。

誰かが勝手に資金を使ってしまわないように、複数人の署名が必要なセキュリティ性の高いウォレットに資金を保管することが重要です。

DAODAOを利用する前準備

Keplr

ここからは、DAODAOを利用してDAOの投票システムを作成、運用する方法を解説します。

DAODAOを利用するには、ウォレットと仮想通貨が必要です。

ただし、2022年7月時点でDAODAOが対応しているネットワークはJunoのみで、使えるウォレットはKeplrウォレットに限られています。

Keplrウォレットを持っていない場合は、Keplrウォレットとトークンを用意するところから始めましょう。

Keplrウォレットを用意する

KeplrウォレットはCosmosに対応しており、MetaMaskのようにブラウザ拡張機能またはアプリとして利用できます。

スマートフォンのアプリストアか、ブラウザの拡張機能ストアでダウンロードしてください。

ダウンロードする機種・ブラウザここからダウンロード
Google Chromeなどchromeウェブストア
FirefoxFirefox Browser ADD-ONS
iPhoneApp Store
AndroidGoogle Play

Keplrの初期設定をする際、4つの方法から選択できます。

  • Googleアカウントを利用する
  • 新しいKeplrアカウントを作成する
  • シードフレーズを入力してKeplrアカウントを引き継ぐ
  • ledger製品を接続する

いずれかの方法でアカウントを作成し、Keplrウォレットが使えるようにしましょう。

Junoネットワークのウォレットアドレスやトークンを確認するときは、上部の「Cosmos Hub」の部分をクリックし、「Juno」に切り替えてください。

アカウント名の下に書かれた「juno」から始まる英数字がウォレットアドレスです。

表示は省略されていますが、クリックすることで完全なアドレスをコピーできます。

仮想通貨JUNOを手に入れる

メインネットでDAOを作成する場合は、少量のJUNOトークンが必要になります。

JUNOは、OSMOSISJunoswapで交換できるので、あらかじめ仮想通貨取引所でATOMを購入しておくとよいでしょう。

国内の仮想通貨取引所では、GMOコインがATOMを取り扱っています。

少量のJUNOを手に入れる方法

ガス代に使う程度のJUNOであれば、Stakely.ioのFaucetページを利用すれば無料で手に入れることができます。

Stakely.io|JUNO FAUCET

JUNO FAUCETで次の手順をこなしましょう。

  1. JunoネットワークのアドレスをKeplrで確認し、「JUNO ADDRESS」に入力する
  2. RECAPTCHAにチェックを入れて「VERIFY」ボタンを押す
  3. 「TWEET」ボタンを押し、指定された文章をツイートする

ツイートが投稿できたら、Keplrウォレットに少量のJUNOが追加されているのを確認できるはずです。

ただし、すでにJUNOを持っていたり、Twitterアカウントに問題があったりする場合はエラーになり、JUNOを受け取れません。

DAODAOでDAOを作成する手順

DAODAO

準備ができたらDAODAOでDAOを作成していきましょう。

「Enter the app」ボタンを押すとDAODAOのホーム画面へ移動します。

DAODAO|ホーム画面

ホーム画面にある「Connect wallet」ボタンを押して、Keplrウォレットを接続してください。

接続し忘れたままDAOを作成しようとすると、初めから設定し直さないといけなくなります。

DAOの概要を設定する

DAODAOのホーム画面にある「+ Create」ボタンを押すと、DAOの作成画面に移ります。

以下の項目を入力・選択していきましょう。

Set an imageDAOのイメージ画像。URLで入力
NameDAOの名前
DescriptionDAOの概要を伝える説明文
Choose a structureDAOの運用方法を選択するMembership-based=アドレスを登録されているメンバーが投票Governance Token-based=ガバナンストークンを持っているメンバーが投票

「Set an image」では画像をアップロードできないため、あらかじめネット上に画像をアップロードしておく必要があります。

自前のサーバーなどに画像を保存し、画像のURLを入力するようにしましょう。

詳細な情報を設定する

次の画面では投票に関する詳細を設定していきます。

ここで設定する項目の数は、前の画面の「Choose a structure」で選択した内容によって異なります。

ここでは、入力項目数が多い「Governance Token-based」の設定内容を掲載します。

「Membership-based」で入力する項目のほとんどは下記の項目のいずれかと共通しているため、ガバナンストークンを利用しないDAOを作る際も参考にしてください。

「Create a token」
または
「Use an existing token」
ガバナンストークンを新たに作成するか、既存のトークンを利用するかを選択。
Token image※1新たに作成するガバナンストークンのイメージ画像。URLで入力
Token symbol※1ガバナンストークンの省略名(BTC、ETHのような形式での名称)
Token name※1ガバナンストークンの名称
Total token supply※1ガバナンストークンを発行する量
Treasury percent※1DAOに保管するガバナンストークンの割合
Tier name※1階層グループの名称(階層グループは「Add tier」ボタンで追加可能)
% of total token supply※1階層グループ全体に配布するガバナンストークンの割合
Members※1階層グループに所属するメンバーのウォレットアドレス(「Add member」ボタンでメンバーの追加が可能)
Token contract address※2ガバナンストークンとして扱うトークンのコントラクトアドレス
Voting duration提案に投票できる期間。短すぎると未投票が増えやすい
Proposal deposit提案を作成するためにかかるガバナンストークンの量。スパム対策になるが、高額だと提案されにくくなる
Unstaking periodアンステークしてから取引可能になるまでの期間。投票するにはガバナンストークンをDAOにステーキングする(預ける)必要があり、売買や譲渡などの取引をするにはステーキングを解除(アンステーク)しなければならない
Allow revoting※3投票期間内での再投票(投票した内容の変更)を許可するか
Passing threshold※3提案が承認されるために必要な投票割合。投票権ではなく、実際に投票された数に対する割合である点に注意
Quorum※3提案の承認に最低限必要な定足数(クォーラム)。ここで設定した割合以上の人が投票しなければ提案は無効となる

※1 「Create a token」で入力する項目

※2 「Use an existing token」で入力する項目

※3 「Advanced configuration」をオンにすると表示される

入力し終えたら「Review」ボタンから確認画面へ移動し、設定内容を確認したうえで「Create DAO」ボタンを押してください。

このときガス代を請求されるので、あらかじめ用意しておいたJUNOを支払ってDAOの作成を実行しましょう。

しばらく待つとDAOは作成され、自動的にDAOのページに移動します。

DAOの情報を確認する

DAOのページでは、作成したDAOの情報(Voting configurationやTreasuryなど)が正しく設定されているか確認しておきましょう。

万が一、設定に不備があった場合は、DAOを公開する前に投票をとおして修正するか、DAOを新しく作り直してください。

また、Addressesの部分にはDAOに関連するアドレスが記載されているので、必要になったらここからアドレスをコピーしてください。

  • Treasury・・・DAOの資産が保管されているウォレットアドレス
  • Governance token・・・ガバナンストークンのコントラクトアドレス
  • Staking・・・ステーキングされたトークンが入っているウォレットアドレス

投票を実施する方法

DAOが完成したら、投票機能の動きを確認しておきましょう。

DAODAOでは、DAOの設定を変更するためにも提案を作成して投票をおこなう必要があります。

どのように投票が実施されるのか把握していないとDAOを運用できないので、運用を開始する前に必ずチェックしてください。

1.ガバナンストークンをステーキングする

DAOでガバナンストークンを利用する場合、ガバナンストークンをステーキングすることでDAOのメンバーになれます。

ステーキングとは、トークンを預けてロックし、取引や譲渡ができない状態にすることです。

アンステーキングすることでいつでもロックを解除できますが、ガバナンストークンをステーキングした状態でなければDAOの機能が利用できません

これはDAOの作成者も同様なので、最初に「Stake tokens」ボタンからステーキングしてください。

ステーキングする際は、ガス代としてJUNOが必要です。

ステーキングに成功するとDAOのメンバーとして認められ、Voting Power(投票の影響力)が表示されます。

なお、DAO作成時に「Membership-based」を選択した場合はガバナンストークンを扱わないため、ステーキングする必要はありません。

2.提案を作成する

DAOのメンバーは「Create a proposal」ボタンから提案を作成できます。

提案のタイトルと内容を入力し「Publish proposal」ボタンを押して公開しましょう。

上記の項目だけでも提案を作成できますが、提案が承認されたときに実行されるアクションを「+ Add an action」ボタンから追加することも可能です

追加できるアクションは以下のとおりで、複数のアクションを組み合わせて実行することもできます。

SpendDAOの資金をJUNOアドレスへ送金する
Mintガバナンストークンを追加で生成する
StakingDAOに預けられているJUNOを管理する(ステーキングの委任など)
Update InfoDAOの情報(画像、名前、説明文など)を更新する
Add Treasury TokenDAOが管理するトークンの種類を追加する
Remove Treasury TokenDAOが管理するトークンの種類を減らす
Update Voting Config投票に関する設定(投票期間など)を更新する
Instantiate Smart Contract指定するスマートコントラクトの実体を生成(インスタンス化)する
Execute Smart Contractスマートコントラクトを実行する
Migrate Smart Contractスマートコントラクトを新しいコードIDに移行する
Update Contract Adminスマートコントラクトの管理者を更新する
Custom入力したカスタムメッセージを実行する

「Instantiate Smart Contract」以下のアクションはDAO自体のスマートコントラクトに関わるもので、専門的な知識がなければ扱うのは難しいです。

場合によってはDAOの機能が壊れる可能性があるので、設定する項目が理解できないのであれば触らないようにするのが無難でしょう。

3.投票を促す

公開された提案は、DAO画面にある提案一覧に表示されています。

投票する提案を選択し「Yes」「No」「Abstain(棄権)」のいずれかに投票しましょう。

投票する際にもガス代がかかる点に注意してください。

また、新しい提案を公開しても通知が送られることはないので、投票権を持つメンバーに投票するよう促す必要があるでしょう。

投票を促すには、運用しているコミュニティやSNSで告知するのが効率的です。

4.投票結果を確認する

投票期間が経過すると、投票内容や投票率によって承認か否認かが決まります。

承認された提案にアクションが追加されていた場合は、そのアクションが実行されます。

文章のみの提案だった場合は、投票結果をもとにコミュニティで話を進めていきましょう。

なお、結果が確定している投票状況であっても、投票期間が経過するまで待つ必要があるので注意してください

DAOを運用するときの注意点

初めてDAOを運用し始めると、思いもよらないトラブルや不具合に頭を悩ませることになる確率は高いでしょう。

起きる問題によっては、せっかく作ったDAOを放棄することになりかねません

そういった問題が起きないよう、DAOを運用するときに気を付けたい注意点を以下に4つ挙げます。

注意点をよく読んだうえで、DAOを守りながら運用していきましょう。

投票権が集中しないように気を付ける

DAOの投票権のうち過半数が一人に集中しないよう、ガバナンストークンや投票権の分配をよく考えてください。

全体の半分以上のガバナンストークンを一人が抱えることになれば、投票の結果はその一人が決定する形になってしまい、DAOの意義が損なわれます。

ガバナンストークンを発行する時点で均等に分配したり、問題に対応するためのガバナンストークンをDAOに保管したりするなど、一人に集中しない方策をとりましょう。

また、一個人だけでなく、クジラのような複数人のグループにも集中しないよう気を配るべきでしょう

問題の早期発見を心がける

DAOのシステムに問題が発生したときは、なるべく早急に原因を究明し、対策をとることを心がけましょう。

DAOでは投票によって意思決定するため、問題が発覚しても対応するまでに時間がかかります。

たとえば、スマートコントラクトの書き間違えによって資金が流出していたとしても、再び書き直すには投票を挟むことになり、投票が終わるまで修正できません。

問題が起きそうなところには常に目を光らせ、トラブルの早期発見に努めてください。

本番運用の前にテストしてみる

本格的にDAOを立ち上げる前に、テスト用のDAOを作成して試してみましょう。

DAOは近年まで存在しなかった概念であり、話を聞くだけでは運用方法をイメージするのが困難です。

本当に考えたとおりの運用ができるのかテスト運用してから、本番環境を作ると安心できるでしょう。

DAODAOはテストネットでDAOを作ることもできるようなので、テストネットを利用するのもよいかもしれません。

(参考)DAODAO(テストネット)

DAOに関わる法律をチェックする

ガバナンストークンを扱うDAOを運用する際は、法律について学び、チェックするようにしてください。

なぜなら、仮想通貨やDAOを含めたブロックチェーンまわりの法整備は整っておらず、今後なんらかの規制が生まれる可能性があるからです。

たとえば、もしガバナンストークンが証券と見なされるようになれば、有価証券の規制を受けることもありえるでしょう。

法律の問題を避けるために、ガバナンストークンを用いない運用を検討するのも1つの手です。

(参考)coinbase|ガバナンストークンの価値とリスク

まとめ:試しにサクッとDAOを作ってみよう

DAODAOは、Cosmosを基盤として作られたJunoネットワークでDAOを作成するサービスです。

無料でも手に入れることが可能な量のJUNOがあれば、ものの数分でDAOを作ることができます。

ガバナンストークンを用いない少人数のDAOも作れるので、まずは身内でDAOの運用を試すところから始めてみてください。

[test ]

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