「まるで日本円で取引」仮想NISHIが語るSBI Web3ウォレットの可能性とは?

SBI VCトレードは、暗号資産交換業(暗号資産取引所)をメインとするSBI傘下の100%子会社です。7月5日には株式会社朝日新聞社と、同じくSBI傘下のSBINFT株式会社とともに、朝日広告賞の受賞者にNFTを利用したデジタル賞状を発行しました。デジタル賞状は、第三者への譲渡が不可能なSBT(ソウルバンドトークン)形式で発行される点が大きな特徴となっています。

そんなSBI VCトレードが2023年1月にリリースした製品が、SBI Web3ウォレットです。SBI Web3ウォレットは従来のウォレットと、暗号資産を購入NFTの売買ができるのだといいます。しかし、そもそもなぜこのようなウォレットを作ろうと考えたのでしょうか?

今回は、SBI Web3ウォレットの考案者のひとりである、仮想NISHIさんにお話をうかがってきました。

仮想NISHIさんプロフィール

SBI VCトレード クリプトアナリスト/新規事業戦略担当/ SBIホールディングス デジタルスペース室副室長。

金融機関における有価証券運用や国内シンクタンクにおける調査分析の経験を活かし、オンチェーンデータを始め暗号資産市場を分析、Twitterへの情報発信のほか新聞・雑誌など、暗号資産市場の解説を行う。

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SBI Web3ウォレットを思いついたきっかけは?

前提として、大手ウォレットは使いづらいと感じておりました。日本では大手ウォレットの普及率が0.2%という調査の結果があり、G20の中では最下位とも言われています。まぁ、正確な調査結果はないのですが、肌感覚としても先進国の中では低いでしょう。その背景として、私はユーザー側に3つ、事業社側に2つ理由があると考えました。

ユーザー側
  • 日本の銀行口座の保有率は97%。一方で東南アジアは5割・欧州でも7割となっており、世界を見てみると意外と銀行口座を持っていない人が多い。そのため、海外は日本に比べてウォレットを作るメリットがある。
  • 日本では暗号資産交換業のライセンス制度があるため、DeFiやGameFiが無登録の交換業、つまり違法業者という扱いをされてしまう。そのため、日本でマーケティング活動もしづらいという現状がある。
  • 日本は高所得国に該当するため、GameFiなどの報酬が労働賃金を上回ることはまれ。

この3つが、ユーザー側から見てウォレットを作らない理由、普及率が低い理由になるのかなと思っております。さらに、事業社側には、かなり大きい問題点が2つあります。

事業社側
  • NFTを出品しようとすると、口座開設から入金・出金・送金など一連の流れが大変。特に経理や会計にとって円換算をどうすればいいのか、いつ締めにするのかなどの問題が立ちはだかる。暗号資産自体が時価会計のため、経理が全てを管理するのは現実的ではない。
  • ウォレットの秘密鍵を保管するのは誰なのかという問題。弁護士によっては会社内に秘密鍵を置いておくのはよくないと提言する人もおり、不明瞭な部分が多い。

上記のように、大きな問題があります。私は日本のアニメ・漫画・ゲームは世界一流だと思っていますが、それなのに先ほどの理由から、せっかくいいIPを持っている大企業ですらなかなかWeb3のマーケットに参入してくれない。この点が長年、私の心にわだかまりとなっていました。

これを解決したくて、SBI Web3ウォレットを作ることにしたのです。結果、現在多数の大企業様より、導入をご検討いただいています。

某大手ウォレットについて

私は、大手ウォレットを使っている人たちを全く否定するつもりはありません。私も使っているので(笑)現在大手ウォレットを使っているのは0.2%のアーリーマジョリティなので、むしろがんばってもらいたいですね。どんどん先端領域に進出して。

ただ、私はもっともっと、残り99.8%の人たちにも普及していけたらなと思っています。まず人が集まらないと、業界にお金が発生しないじゃないですか。人が集まって、やっとお金が発生する。やっとそこでビジネスが回るので。

用語:アーリーマジョリティ

新しい製品やサービスが市場に投入されたときに、それを採用する顧客のグループを示すマーケティングの用語。アーリーマジョリティは、新製品が市場にある程度浸透した後で、その製品を取り入れる消費者の層を指す。

SBI Web3ウォレットに秘密鍵はありますか?

秘密鍵はありますが、我々の暗号資産交換業のメイン業務のひとつにカストディがあり、お客様の秘密鍵は我々が預かっております。

クリプト民なら何度も秘密鍵を忘れてしまった経験があると思いますが、SBI Web3ウォレットなら秘密鍵を無くすことはありません。もしパスワードとメールアドレスを忘れてしまったら、マイナンバーカードなどをご提出いただき、所定の手続きを終えればアカウントは復活します。

これにより、相続などの問題もクリアになりました。もちろん、取引履歴書も出せます。

用語:カストディ

暗号資産を所有者の代わりに保管・管理・移転を行う業務のこと。顧客が所有する金融商品を安全に保管し、それに関連する作業を代行する。

SBIでNFTを購入する流れ

例えば、SBI VCトレードの口座に1万円があって、マーケットに1万円のNFTがあるとします。その場合、口座に1万円があれば、「購入」ボタンを押すだけでMATICに変わって、送られます。トレードをする必要がないのです。

そして、買ったNFTはカストディアルに送られてくるという仕組みになっています。逆にNFTが売れたときは、MATICがウォレットに入ったタイミングで円転されて、円で入ってきます。つまり、まるで日本円で取引しているような感覚で、NFTの取引ができるのです。

商品を選択して、購入ボタンを押すと、裏で署名が走ります。秘密鍵は我々が預かっているので、バックグランドで署名されるのです。ユーザー側はAcceptがいりません。

用語:カストディアルウォレット

ユーザーの暗号資産を第三者が保管・管理するウォレットのこと。信頼できる金融機関や専門のカストディサービスが担当する。

現状はSBI NFTマーケットプレイスでのみ利用可能?

現状はそうです。ですが、いずれはたくさんのマーケットプレイスと提携したり、使えるチェーンを増やしたりしていきたいですね。

ただ、SBI NFTマーケットプレイスならSBI VCトレードのメールアドレスとパスワードを入れるだけでウォレットコネクトとなるため、初心者でも簡単に取引ができます。

ウォレットコネクトとか言われても分からない人でも、操作がこれだけなら分かるのではないでしょうか。むしろメールアドレスとパスワードを入力するという作業ができない人がNFTを触るのは、ちょっと怖いかなって感じがしますね(笑)

用語:ウォレットコネクト

暗号資産ウォレットをNFTのマーケットプレイスなどにつなげること。

法人でSBI Web3ウォレットを持つ場合、複数で管理することに?

どの企業も必ずネット銀行の法人口座、もしくは銀行の法人口座を持っているはずです。SBI Web3ウォレットに関しても、パスワードとIDを管理していただくことになります。これは、今までの一般企業が当たり前に資産を管理していたことの延長線上でしかありません。

チェーンにPolygonを選んだ理由

SBINFTがEthereumとPolygon(MATIC)に対応していたことがあります。そして、BNBを除いたら、Ethereumの次に普及しているのはPolygonです。あと、手数料が安い。消費者向けなので、手数料がというところが魅力でした。ウォレットに関して言えば、手数料を負担しているのは弊社になります。

手数料0円で、どう利益を出している?

我々は暗号資産交換業ですので、円とPolygonのMATICを交換するときに発生するスプレッドが我々の収益となります。

用語:スプレッド

買値と売値の差を表す金融用語。

SBI Web3ウォレットが業界全体に与える影響

将来的に、ひとりひとつのウォレットアドレスが必要な時代が来るのではないかと考えています。そのときの決定版がSBI Web3ウォレットとなれば嬉しいですね。

今後10年で成し遂げたいこと

SBIでエコノミーを作っていきたいですね。例えばゲームを買って、ミュージシャンのライブのチケットを買って、みたいなエコノミーをSBIの中で作っていきたいんですよ。共創の世界。ただ、結婚などの理由から、こうした「オタ活」を止める人が出てくると思います。そんなときに、資産運用もSBIでやってくれればなと思いますね。

SBIは8銘柄でステーキングサービスができるのですが、資産を預けるだけでステーキング報酬が得られるのは弊社だけなんです。弊社のステーキングの利回り報酬は業界でもトップクラスなので、オタ活から目覚めた人にはぜひ利用していただきたい。NFTのメイン層はおそらく20代なので、その人たちが30歳くらいになって、オタ活から目が覚めて資産運用をするとなったときに、SBIを使ってくれるように馴染んでいけたらうれしいかな。

あと、6月から日本の法律が変わって、電子決済手段等取引業者というライセンスを取った会社がステーブルコインを売れるようになりました。実は、ちゃんとした銀行が担保になったステーブルコインを出すのは、先進国では日本が初めてなんです。ステーブルコインで色々買うというような世界がいいなと思っています。特に二次流通以降は、ステーブルコインに優位性がありますからね。例えば利益を他人と分配し続けることがクレジットカードは苦手なので……。ステーブルコインがもっと普及し出すと、SBI Web3ウォレットの力がもっと強くなるのかなと思います。

用語:ステーキング

暗号資産による資産運用方法のひとつ。対象の暗号資産を預けるだけで報酬が得られる。

用語:ステーブルコイン

法定通貨などと価格を連動するように設計された暗号資産のこと。上記の場合、日本円の価格と連動した暗号資産のことを指す。

若い世代がNFTに参入するために必要なこと

どうしても金銭のやり取りが発生するため、暗号資産交換業も18歳以上の成人と定められています。一般常識的な言い方になってしまいますが、お金をやり取りすることは、大人がやるべきだと思っています。

他の銀行業は後追いしてくる?

いい質問ですね(笑)

実は、特許を出願中なので、他社さんはなかなか参入しづらいと思います。

まとめ

SBI VCトレードが入る泉ガーデンタワー

国内・海外取引所の口座を開設し、KYC(本人確認)を終わらせ、日本円で入金して、仮想通貨を買って…。SBI Web3ウォレットを利用すれば、こうした手順を踏まずとも、NFTを売買可能です。日本円で取引ができるようでいて、裏では暗号資産取引が自動で行われています。

まさに、Web2とWeb3の間、Web2.5と言える新技術と言えるのではないでしょうか。導入したいと考えている事業社様は、SBI VCトレード、もしくは仮想NISHIさんまでお問い合わせください。

お問い合わせ


SBI VCトレード:https://www.sbivc.co.jp/faqs
仮想NISHIさん:https://twitter.com/Nishi8maru

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