イーサリアム上に立ち上げられた「TheDAO」プロジェクトは2016年、画期的な方法で投資を行う事から大きな人気を得ていました。
しかし、仮想通貨及びブロックチェーン業界を大混乱させた「TheDAO事件」を起こしてしまいました。
ここではDAOの仕組みや「TheDAO事件」について分かりやすく説明していきます。
この記事で分かること
・DAOとはなにか
・「The DAO事件」とは
・「TheDAO事件」から学ぶべきことはなにか
DAOとは?
DAOとは、自律分散型組織です。つまり、ブロックチェーン上で作られた管理者が存在しない組織です。
取引やルールがコード化されているため、管理者を介さずにあらゆることを実行できます。
またDAOの組織内には、位やランクの違いは存在しません。
そのため、すべての参加者が決定権を保有し、経営に関わることができます。
この概念を具体化したプロジェクトが「TheDAO」です。
「TheDAO」は2016年に、ドイツのスタートアップ企業のSlock.it社によって立ち上げられたプロジェクトです。
「TheDAO」は、投資家から資金を集め、スタートアップ企業などに出資するベンチャーキャピタルのような機能を持っていました。従来の場合、ベンチャーキャピタルが投資先を選んでいました。
しかし、「TheDAO」では、投資家の投票で投資先が決まる画期的な方法でした。加えて人を介さないため、コスト削減できることから人気がありました。
Slock.it社は、「TheDAO」を2016年5月にイーサリアムネットワーク上に立ち上げた際、独自トークンを販売することで資金調達を行うICOを利用しました。
この方法により、現在仮想通貨の時価総額ランキング2位のイーサリアムを保有するあらゆる人が、イーサリアムを「TheDAO」の独自トークンであるDAOトークンと交換できました。
その結果、約150億円の資金調達に成功し、世界中から注目されていました。
DAOトークンは、2つの機能を持っていました。1つは投票権として機能します。DAOトークン保有者は「TheDAO」内で発表された投資先に、DAOトークンを使い、投票できます。また、投票先のプロジェクトが利益を生み出した場合には報酬を得られる仕組みとなっていました。もう1つの機能は、DAOトークンを高値で売却し、利益を獲得することです。
「TheDAO」の機能
「TheDAO事件」を理解するために、さらに3つの機能を知る必要があります。
スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、あらゆる取引や作業を自動で行うサービスです。
スマートコントラクトの機能はエアコンと似ています。
私たちはエアコンの仕組みを理解することなく、リモコンのボタンを押すだけで、冷房や暖房などのサービスを受けられます。
「TheDAO」がスマートコントラクトを利用したことで、投資家は「TheDAO」の仕組みを理解することなく、ボタンをワンクリックするだけでサービスを受けることができました。
しかし、スマートコントラクトは便利ですが、バグが含まれていた場合、第3者が直すことができないという問題点があります。
Split機能
結論は、DAOトークンをイーサリアムに変換する機能です。
ユーザーが「TheDAO」内の資金を特定のアドレスに移動させる指示を出した際、イーサリアムがそのアドレスに送金されます。
ユーザーは28日後に、イーサリアムを引き出すことができます。
キュレーター
結論としては、DAOトークン保有者のリーダーです。
投資家は評価した投資先にDAOトークンを送り、投資先を決定する権利を持っています。
しかし、最終的に投資先を決定するのはキュレーターです。
キュレーターは、すべてのDAOトークン保有者の代わりに提案された投資先の情報を整理したり、投資先の有無を確認したりするなどしていました。
そのため、リスクのある投資を未然に防ぐことができました。
TheDAO事件
このICO後、「TheDAO」が利用するスマートコントラクトの一部が脆弱であると指摘されました。修正を行うプロジェクトが提案された後、開発チームはバグの修正に取りかかりました。しかし、ハッカーは2016年6月17日、バグを利用して、約50億円を盗みました。
これは「TheDAO」のスマートコントラクトに2つの問題点があったからです。1つ目の問題点は、同じ作業を繰り返す可能性を考慮せずに作られていたことです。2つ目の問題点は、スマートコントラクトがイーサリアムを送金後、「TheDAO」の保有資金を更新することです。ハッカーはこの2つの問題点とSplit機能を利用し、スマートコントラクトが「TheDAO」の資金を自動更新する前に、複数回にわたってイーサリアムを送るように指示をしていました。
Split機能を利用し、「TheDAO」からイーサリアムを移動させた場合、27日間引き出すことができません。
その期間を利用し、イーサリアムの創業者であるヴィタリック・ブテリンを含めたコミュニティメンバーはこの問題にどう対処するのかについて話し合いました。
ヴィタリック・ブテリンは当初、盗まれたイーサリアムを防ぐソフトフォークを提案しました。
しかし、ハッカーから自分が行ったやり方はルールに準拠したものであり、取引を無効にした人に対して法的措置をとるというメッセージが届きました。
また、イーサリアムのマイナーに100万イーサリアムと100ビットコインを渡し、ソフトフォークに協力させないと伝えてきました。
その後、ハッカーから攻撃される前まで遡り、取引を無効にするハードフォークが実行され、盗まれたイーサリアムは無事、保有者に戻されました。
しかしこの決断は、ブロックチェーンの分散型という特徴に反するという声を押し切って行われたため、ハードフォーク後にイーサリアム内部で衝突が起こりました。
ハードフォークが生じる前のブロックチェーンを支持するイーサリアム・クラシックとハードフォークを受け入れたイーサリアムの2つに分岐してしまいました。
これは「TheDAO」の終わりの始まりでした。
DAOトークンは仮想通貨取引所・Poloniexに上場していましたが、2016年9月に廃止されました。Krakenからも同年12月に、廃止されました。
さらに、米国の証券取引を管轄するSEC(米国証券取引委員会)が翌年、「TheDAO」は有価証券の売買の未登録のまま、サービス提供を行ったとして証券取引法に違反すると述べました。
SECは未登録の取引に参加した投資家も証券取引法に違反する可能性があると指摘しましたが、投資家への罰金は科さないと発表しています。
TheDAO事件から学ぶべきことはなにか
DAOはNFTやメタバースと関連していることや誰でも立ち上げられることから注目されていますが、「DAO事件」から学ぶべきことがあります。
それはスマートコントラクトの堅牢性と法律に準拠することです。
スマートコントラクトの堅牢性
今回の事件は、イーサリアムネットワークには問題がなく、「TheDAO」のスマートコントラクトに欠陥があったため起きました。
そのため、DAOプロジェクトを立ち上げる際は、堅牢性が高いスマートコントラクトを構築することが大切でしょう。
法律に準拠する
法律に準拠したDAOプロジェクトを立ち上げることの重要性がわかります。
「TheDAO」は証券取引法に違反していたために、
SECによって終了させられたプロジェクトです。
法律に準拠したプロジェクトを立ち上げることは時間がかかりますが、
長く続けられるDAOプロジェクトを立ち上げるためには、
規則に従うことが大切だとわかる事件です。
まとめ
多くの人が「TheDAO」に大きな期待をもっていたからこそ、この事件は、仮想通貨及びブロックチェーン業界に影響を与えた出来事の1つです。
しかし、この事件から学べることも沢山あったでしょう。教訓を活かし、DAOに関わってみましょう。