開発者にも報酬が分配される「dAppステーキング」の使い方と登録方法

ブロックチェーンを利用したWeb3のビジョンを実現させるには、ユーザーのために優れたdAppを提供する必要があると言われています。

優れたdAppを開発しやすい環境を作るために、Astar(Astar Network)ではdAppステーキング(dApp Staking)という機能が実装されました。
ユーザーと開発者の両方が収益を得られる機能なので、知らないと損するかもしれません。

この記事では、dAppステーキングの概要を説明し、利用方法や登録方法を解説します。

この記事のザックリ要約!
✅dAppステーキングは、特定のdAppに対して独自トークンを預ける(ステークする)ことができる
✅ステークすると報酬が発生し、トークンを預けた人とdAppの開発者に分配される
✅dAppステーキングをするには、一定量以上の独自トークンとネイティブウォレットが必要
✅dAppステーキングに自分のプロジェクトを登録するには、要件を満たしたうえで申請しなければならない

AstarでdAppやサービスを提供する人は、ぜひ本記事を読んでみてください。

そもそもdAppステーキングとは?

Astar Portal|dApp Staking

dAppステーキングはAstar Portalで利用できる機能の1つです。

dAppやNFTプロジェクトに対して、Astarの独自トークンASTRをステークする(預ける)ことで、預けた金額に応じた報酬(インセンティブ)を得られます。
dAppステーキングは公式プラットフォームで用意された機能であり、ほかのプラットフォームでASTRをステークするよりも比較的高くて安定した報酬が見込めるでしょう。

ちなみに、dAppステーキングでステークしている人のことを、ステーカーもしくはノミネーターと呼びます。

開発者とステーカーに報酬が分配される

dAppステーキングはBuild2Earnプログラムとして機能しており、ステーカーだけでなく開発者にも報酬が分配されます

そのため、ステーカーは応援したいdAppにステークすることで、自分の報酬を得ながら開発者を援助できます。
開発者は得た報酬を開発費に充てることができますし、エアドロップなどの形でアプリユーザーやステーカーに還元することも可能です。

ShidenやShibuyaでも可能

Astarだけでなく、姉妹ブロックチェーンであるShidenや、テストネットであるShibuyaでもdAppステーキングを実施できます

Shiden上ではSDNトークンを、Shibuya上ではSBYトークンを、dAppステーキングに使用します。
ブロックチェーンごとにステーク対象のdAppが異なるため、それぞれのチェーンで気になるdAppを探してみるといいかもしれません。

いずれのブロックチェーンでも同じプラットフォームでdAppステーキングを始められるので、ブロックチェーンの違いで迷うことはないでしょう。

dAppステーキングを利用するメリット

dAppステーキングのメリットは、ステーキングによってステーカーも開発者も報酬を得られることです。
このメリットによって期待できる効果を以下で解説していきます。

Astarでの開発が活発になる

開発者が報酬を得られる仕組みが存在することで、新しいAstar開発者の増加が期待できます。

dAppステーキングが登場するまでは、開発者への報酬はほとんど存在せず、あっても一時的なものでしかありませんでした。
しかし、dAppステーキングに登録したアプリであれば、ステーカーがいる限り定期的に収益を得られます

この仕組みに魅力を感じる開発者がAstarに集まり、Astarの開発は活発化していくでしょう。

より良いdAppが登場しやすくなる

dAppステーキングの報酬によって金銭的問題を解消・緩和した開発者は、より良いdAppを開発しやすくなります。

ブロックチェーンの世界には、予算や維持費が足りなくなって開発が中止となったり、公開を停止したりしたプロジェクトも多いです。

しかし、dAppステーキングに登録されたdAppであれば、ステーカーの応援によって開発に資金を注ぎやすくなるでしょう。
また、良いdAppを開発できてステーカーが集まれば報酬も増えるので、好循環が起きる可能性もあります。

トークンの価値が上がりやすくなる

dAppステーキングによって総流通量が減少することで、トークン価値の上昇が期待できるでしょう。

トークンの価値を上げるには、供給より需要のほうが多くなる必要があります。
ステークされているトークンが多くなるほど市場に出回るトークンが少なくなるため供給が減少し、価値が上がりやすくなります。

ブロックチェーンのトークン価値が高まればブロックチェーン自体も評価されやすくなるので、Astar全体の価値が上昇することにも繋がるでしょう。

dAppステーキングでASTRを預ける手順

dAppステーキングのステーカーになるには、以下の手順でトークンを預けましょう。
1. ステークするトークンを用意する
2. Astar Portalにネイティブウォレットを接続する
3. dAppを選んでステークを実行する

ここでは例として、Astarでステークする際の具体的な流れを解説していきます。

500ASTRを購入する

まずはステークするASTRトークンを購入します。

注意しなければならないのが、ステークの最低金額が500ASTRである点です。
複数のdAppにステークする際は、それぞれに500ASTR以上をステークする必要があるので気を付けましょう。

ちなみに、ASTRはbitbankなどで購入できます。

bitbank

bitbankについては、こちらの記事を参考にしてください。

ネイティブウォレットに送金する

bitbankなどで購入したASTRは、ネイティブウォレットに送金します。

ネイティブウォレットとは、Polkadotで使えるウォレットです。
以下のウォレットなどが該当するので、好きなウォレットを使いましょう。
Polkadot.js
Talisman
SubWallet
CloverWallet
Math Wallet
Metadot

なお、メタマスクはネイティブウォレットではないため、メタマスクに入っているASTRをステークしたい場合はネイティブウォレットに移動しなければなりません。
Astar PortalのTransfer機能を使えば移動できますが、送金されたトークンは一度EVM depositに着金するため、Withdrawしなければならない点に注意しましょう。

dAppを選んでステークする

ASTRをネイティブウォレットに入れたら、Astar Portalでウォレットを接続し、ネットワークが「Astar Network」になっていることを確認してください。

ShidenやShibuyaでステークしたい場合は、ネットワークを表示している部分をクリックしてネットワークを変更しましょう。

ネットワークが正しいことを確認したら、「Staking」タブからステーキング画面を開き、ステークするdAppを探します。

ステークしたいdAppを見つけたら選択して詳細画面を開き、「Stake」ボタンを押しましょう。

あとはステークする金額を入力して「Confirm」ボタンから処理を進めていけば、ステーキングが完了します。

自分のdAppを登録するための必要条件

dAppステーキングに自分が開発したdAppを登録する方法を解説していきます。

登録するには申請が必要ですが、申請前に満たしておくべき必要条件があります。
ここでは、Astarで登録するときに必要な5つの条件について詳細をお伝えしていきます。
・Astar Network上にデプロイ(実装)している
・Blockscoutでコントラクトを検証している
・DefiLlamaにリストされている
・DappRadarに掲載されている
・Astar council(カウンシル)に承認されている

なお、Astar以外のネットワークではこれらの要件は必須ではないようですが、要件を満たしているほど申請が通りやすくなるでしょう。

dAppをネットワークにデプロイしている

申請できるdAppは、Astarへのデプロイが完了しており、実際に利用できる状態のものだけです。
まだ開発中であれば、スマートコントラクトを完成させてデプロイを済ませてください。
ただし、一度デプロイしたdAppはあとで修正するのが難しいです。
慌てて本番環境でデプロイせずに、テストネットで検証を重ねたうえでデプロイしましょう。

スマートコントラクトを検証している

デプロイしたdAppのスマートコントラクトを、Blockscoutで検証してもらう必要があります。

Blockscout

Blockscoutは、さまざまなEVM(イーサリアム仮想マシン)ブロックチェーンのスマートコントラクトや取引履歴を確認できるブロックチェーンエクスプローラーです。

BlockscoutのAstarページで自分のdAppのコントラクトアドレスを検索すると、dAppの詳細画面が開けるでしょう。

Blockscout|dAppステーキングのコントラクト詳細

詳細画面で「Code」タブを選択し、「Verify & Publish」ボタンをクリックすれば、検証を申請する画面が開きます。

(引用:Blockscout|Verifying a Smart Contract

必要事項を入力して申請し、「Code」タブの横にチェックマークが付けば検証完了です。

(参考)Blockscout docs|Verifying a Smart Contract

DefiLlamaにリストされている

登録するdAppがDefiアプリであれば、DefiLlamaのリストにあなたのdAppを追加させてください。

DefiLlama|Astar TVL

リストさせるには、以下の手順を踏む必要があります。
1. GithubにあるDefiLlamaのAdaptersリポジトリをフォークする
2. 「projects」フォルダの中に、リストしたいプロジェクトと同名のフォルダを新規作成する
3. 新規作成したフォルダの中に「SDKアダプター」または「フェッチアダプター」を追加する
4. フォークでの変更内容についての簡単な説明とともに、プルリクエストを作成する

フォークはリポジトリのコピーのようなもので、管理者がプルリクエストを承認することではじめてコピー元のオリジナルに変更が反映されます。

forkボタンを押して、フォルダとアダプターを追加しましょう。

Github|DefiLlamaリポジトリ

変更が承認されれば24時間ほどでDefiLlamaにdAppがリストされるはずです。

新規作成したフォルダに追加するアダプターの書き方については、参考元のドキュメントなどを参照してください。

(参考)Astar ドキュメント|Defi Llama

DappRadarに掲載されている

DappRadarに掲載されることも、dAppステーキングに登録するために必要な要件の1つです。

DappRadar

DappRadarでアカウントを作成し、申請フォームに必要事項を入力して掲載を申請しましょう。
DappRadarの開発者ページで「Submit dapp」を押せば、アカウント作成画面もしくは申請フォームに移動します。

DappRadar|Developers

アカウント作成画面が表示された場合はメールアドレスを使ってアカウントを作成し、ログインしてから再度「Submit dapp」を押してみてください。

審査に通りやすくするために、フォームに入力する内容はなるべく完璧にしましょう。

(参考)Astar ドキュメント|DappRadar

councilに承認されている

Astarのcouncil(カウンシル)にdAppステーキングへの参加を提案することも、必要条件として触れられています。

Astar Network|forum

councilはいわゆる評議会で、Astarに関する提案の採決を取りまとめています。
フォーラムから提案できるので、テンプレートを参考にしながら提案文を書いてみましょう。
投票によって提案が可決されれば、dAppステーキングへの登録が認められます。

dApp以外を登録するには?

Astarに関係するもののスマートコントラクトを使用していないサービスのように、上記の要件を満たせないプロジェクトでも、dAppステーキングに登録することは可能です。

要件を満たせないプロジェクトの場合は、以下のいずれかの方法をとおして承認してもらいましょう。
・councilのフォーラムにdAppステーキングへの登録を提案し、可決される(上記要件と同様)
・Astarのアンバサダーとビデオ通話を繋げてAMA(説明会)を実施する
・Discordのチャンネルでプロジェクトの説明やロードマップを公表する
・Astarが提供するツールを使ってプロジェクトのメトリクスを追跡する

それぞれの詳細については、AstarのDiscordサーバーにアクセスして「CORE TEAM」または「OFFICIAL AMBASSADOR」に問い合わせてみてください。
問い合わせる際は、チームメンバーになりすましている人に騙されないように注意しましょう。

dApp・プロジェクトの登録を申請する方法

以上の要件を満たしたら、一定のトークンを保有している状態で専用フォームから申請することでdAppステーキングに登録できます。

Astar Network DApp Staking Request Form

トークンを保有していなければ、申請を受け付けてもらえません。
ブロックチェーンごとに必要なトークンと量が異なるので注意してください。

登録するブロックチェーン必要なトークンと量
Astar Network1000 ASTR
Shiden Network100 SDN
Shibuya Network100 SBY

dAppステーキングを利用する際の注意点

dAppステーキングを利用するなかでステーカーが注意すべき点を2つ解説します。

注意していないと手間が増える場合もあるので、ステークする際は気を付けておきましょう。
ちなみに、解説のなかでeraという単位が出てきますが、「era=日」という認識で問題ないでしょう。

報酬はこまめに請求する必要がある

ステーキングの報酬はAstar Portalで「Claim」ボタンを押せば請求できます。

Astar Portal|dApp Staking

ただし、Astar Portalには一度に50件までという請求制限があるので、こまめに報酬を受け取る必要があります。

1eraごとに1件の請求とカウントされるため、ステークしているdAppが多いほど制限にかかるまでの期間が短くなります。

たとえば、1つのdAppにステークしているときは50eraぶんの、5つのdAppにステークしているときは10eraぶんの未請求報酬を残していると、制限に達してしまいます。
制限に達してしまった場合は、Polkadot.js web appで手動請求をしなければなりません。

Polkadot.js|Astar extrinsics

(参考)Astar ドキュメント|Polkadot.Js で dApp Staking 報酬の手動請求

ステーク解除には時間がかかる

ステーキングの解除には結合解除期間が設けられているため、ステークしているトークンを受け取るまでに時間がかかります。

Polkadotを利用しているAstarの性質上、結合解除期間を省くことはできません。

結合解除期間はブロックチェーンによって異なり、Astarは10era、Shidenは5eraとなっています。

Astar Portalで「Unbond」を実行するとステーキングの解除が始まるので、結合解除期間が過ぎるまで待ちましょう。

(引用:Astar ドキュメント|ステークの結合解除

期間後はトークンがUnbonded Fundsに移動しているので、「Withdraw」ボタンを押して受け取ってください。

(引用:Astar ドキュメント|ステークの結合解除

まとめ:dAppステーキングをチェックしておこう

dAppステーキングを利用することでステーカーと開発者が利益を獲得し、Astar Network全体が好循環を生むきっかけが生まれます。
2023年1月時点で、Astar上でdAppステーキングの対象となっているdAppの数は30個です。
ステークできるdAppを確認し、それぞれがどんなプロジェクトか調べたうえでステーキングを試してみるのもよいでしょう。
AstarやShidenでプロジェクトを展開するつもりであれば、dAppステーキングに登録するための要件をチェックし、達成を目指してみてください。

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