NFTはオワコンと言われて久しい今日このごろ。「NFTの95%が無価値」と主張するレポートが話題となりました。実際のところ、NFTは現在どのようなフェーズにいるかを知りたい読者が多いのではないでしょうか。
本記事では、NFTがなぜオワコンと称されるようになったのかからわかりやすく紐解きます。結論から言うと、NFTはオワコンではなく、これからこそ真価を発揮すると考えられます。
その理由も詳しく説明するので、ぜひ最後までご覧ください。
- NFTは高額取引のニュースが減った
- PFP NFTは供給過多でバブルが弾けた
- 技術としてのNFTに注目が集まっている
- スタバやヴィトンなどブランド企業がNFTを活用
- レイヤー2のガス代低減が今後NFTの鍵となる見込み
NFTがオワコンと言われる4つの理由
NFTがオワコンと言われる4つの理由について説明します。順番に見ていきましょう。
- 高額取引のニュースが減った
- 投機目的の失敗
- PFP NFTのバブルがはじけた
- NFTの仕組みが理解しにく
高額取引のニュースが減った
NFTがオワコンと言われる理由の1つとして、高額取引のニュースが減った点が挙げられます。2年前である2021年は、NFTは大きな話題を呼びました。高額取引の具体的内容については下記の表の通りです。
2021年2月 | Beeple「Everydays - The First 5000 Days」 | 6900万ドル(約75億円) |
2021年3月 | ジャックドーシー「ツイート(初投稿)」 | 290万ドル(約3億6600万円) |
2021年11月 | OpenSeea売上高 | 100億ドルを突破 |
2021年11月 | The Sandboxの土地 | 340万ドルで販売 |
2023年現在、NFTの高額取引を取り上げるニュースは目立ちません。詳しいデータを検証することで、この現状が明らかになります。
以下に、2021年9月から今日までのNFT取引高の推移を示すグラフを掲載しました。2021年から2022年初頭にかけてのピーク時と比べ、取引ボリュームは顕著に減少していると確認できます。
まさに、2022年はNFTの冬の時代を迎えたと言えます。
冬の時代となった原因
原因としては、2つの出来事が考えられます。
- 2022年5月のテラショック
- 2022年11月のFTX破綻
「テラショック」とは、ステーブルコイン「テラUSD」がペッグを外れた結果、市場が大きく下落した事件を指します。この事態はステーブルコインへの信頼を揺るがせ、仮想通貨市場全般に深刻な影響を及ぼしました。
「FTX」は、その時点で業界トップクラスの仮想通貨取引所でした。しかし、関連会社である「アラメダ・リサーチ」がFTXの顧客からの預金を高リスク投資に使用した疑惑が浮上。
これに加え、顧客の資産の不正利用や財務の透明性に欠ける行為などが積み重なり、FTXの破綻へとつながりました。
投機目的の失敗
NFTがオワコンと見なされる背景には、転売を主要な動機としている人々が、NFTの価値を低く感じ始めたことが関係しています。
NFTアートのブーム時は、価格の上昇が日常的で、一日で購入したNFTが翌日に高値で取引される事例が頻発しました。その結果、NFTの実際の価値よりも、転売の利益を求める人々が増えました。
転売目的の人々の行動特性は以下の通り。
- NFTの所有期間が短い
- 投機的な動機が強い
NFTの本質的な価値よりも投機を重視するこの層が、現在の市場の停滞時に「NFTは終わった」と感じるのは理解できます。
PFP NFTのバブルがはじけた
NFTがオワコンと言われる3つ目の理由は、PFP NFTのバブルの終焉が考えられます。
2021年から2022年にかけて、PFP NFTは非常に人気となりました。アメリカの著名人や日本のインフルエンサーや芸能人が、次々に高額なPFP NFTを購入。購入したNFTが会員証として機能するなど、特定のコミュニティへの参加が可能となる点も人々を引きつけました。
NFTという最新技術の波に乗っているという感覚も、多くの人々に高揚感をもたらしたのでしょう。クリエイターを中心としたコミュニティが結成され、新しい取り組みやプロジェクトが生まれる過程は、参加者にとって一種のエンターテインメントと言えるほどでした。
SNS上では、多数のユーザーが自らのPFP NFTを紹介して魅力のアピール合戦が盛んに行われ、同じシリーズのNFTを持つユーザー間での交流が活発になる様子が見られました。
需要と供給のミスマッチ
やがて、需要と供給の不均衡が明らかとなりました。アーリーアダプター層の多くがPFP NFTの購入を完了し、供給過多の状態となったのです。
さらに、テラの大暴落やFTXの破綻といった外部要因により、市場は急速に冷え込みます。この結果、NFTは「冬の時代」と称されるようになりました。
十分な計画や特徴のあるNFT、また大手のセレブや有名クリエイターが関与しない小規模プロジェクトは注目されにくくなりました。市場には同じようなデザインやコンセプトのPFP NFTが溢れかえり、バブルの終焉を迎えます。
この状況の中、多くの人々がNFTの価値低下前に早急に売却しようとし、PFP NFTの価値はさらに減少することとなりました。
NFTがオワコンではない4つの理由
PFP NFTの需要は激減したものの、NFTはオワコンではありません。その4つの理由について解説します。
- 技術としてのNFTへ注目が集まっている
- 大企業が続々とNFTを活用している
- L2チェーン普及でガス代が低減する
- Play to earnのゲームでのNFT取引が活発
順番に見ていきましょう。
技術としてのNFTへ注目が集まっている
PFP NFTのバブルが崩壊したものの、NFT技術そのものの価値は依然として存在します。PFP NFTやNFTアートは、NFTの利用シーンの一部に過ぎません。
応用例は下記の通り、多岐にわたります。
- アート
- エンターテインメント
- 不動産
- 特許
- 著作権
- 資格
- 学位など
たとえば、不動産の所有権を証明する場合、従来は物理的な書類や契約書が必要でした。しかし、NFTやブロックチェーン技術を活用すれば、ブロックチェーン上で所有権の移転や確認できるため、デジタル上でも所有権の証明が可能に。
NFTの導入により、履歴書や職務経歴書と同様に、NFTも信頼性のある証明手段として認識されるようになるでしょう。近い将来、採用の際にNFTが標準的な参考情報として利用される日も来るかもしれません。
ブランド企業が続々とNFTを活用している
NFTがオワコンではない理由の3点目として、次々と企業による活用が発表されている点が挙げられます。
ブランド価値の向上、顧客とのエンゲージメントの強化を目的としたマーケティング手法として活用されている例を紹介します。
ルイ・ヴィトンジャパン|ヴィア・トレジャー・トランク
2023年6月にルイ・ヴィトンジャパンは、デジタルコレクティブル「ヴィア・トレジャー・トランク」を公開しました。
このデジタルアイテムは新商品や限定商品、特別な体験へのアクセスパスとして機能します。特筆すべきは、このNFTが譲渡不可能な「SBT(ソウルバウンドトークン)」である点です。
ハイブランドがNFTを活用する方法は多様です。下記の記事で活用事例を紹介しています。
2022年9月にスターバックスは、米国で「スターバックスオデッセイ」というNFTを活用した新しいロイヤルティプログラムを導入しました。このプログラムは、アプリ内のゲームやクイズのミッションを完了することで、NFTを報酬として獲得できます。
獲得したNFTを集めるとでStar(ポイント)が加算され、さまざまな特典を利用できるというものです。下記の記事で詳細について紹介しています。
先に取り上げた有名ブランド以外にも、さまざまな大手企業や地方自治体がNFTの活用を進めています。NFTはオワコンと揶揄されがちですが、実際その価値はデジタル資産として継続していると考えられます。
多数の企業や組織は、NFTの持つ潜在的な可能性をマーケティング手法として採用し、ブランド価値の向上や顧客との関係強化に貢献しています。
Dencunアップデートで、レイヤー2チェーン使用時のガス代が激減する
NFTがオワコンであるとは言えない理由の一つに、将来的にNFT取引のガス代低減の可能性が考えられる点があります。
この低コスト化のカギを握るのは、イーサリアムの「Dencun」(デンクン)アップデートです。
レイヤー2ソリューションであるロールアップの手数料を削減する。
イーサリアムは次の大きなアップデート、Dencun(デンクン)を2024年初旬に予定しています(2023年9月28日現在)。このDencunアップデートにより、Optimism(オプティミズム)やArbitrum(アービトラム)などレイヤー2におけるガス代は最大で100分の1に削減されるとの見通しです。
この変更により、NFT取引時のガス代が数円から数十円程度となると期待されています。ガス代が大幅に低下すれば、NFTの取得ハードルは大きく下がります。
過去、無料のNFT提供があってもガス代はユーザーの負担でしたが、今後はそのコストを企業や運営側が負担することで、ユーザーが真に無料でNFTを受け取る機会が増えるでしょう。
NFTはオワコンどころか、よりアクセスしやすく普及する可能性が高まっています。
Play to earnのゲームでのNFT取引が活発に
NFTがオワコンではない5つ目の理由として、「Play to Earn」のゲームにおけるNFTの取引の活発さを指摘できます。
多くの人はNFTと聞くと、アート作品を連想するかもしれませんが、実際にはゲーム内アイテムやキャラクターとしてのNFT利用が増加しています。下記はDappRadarの調査したDappエコシステムでのユーザーアクティブウォレット数の比較です。
2022年Q3から2023年Q2まで、赤のグラフ(Games)が際立って高いユーザーアクティブウォレット数を誇っているのがわかります。Play to earnのゲームはNFTの取引が活発です。
ゲームでNFTが使用されるシーンは、具体的には下記の通りです。
- ゲーム開始時にキャラクターNFTを購入
- レベル上げしてからキャラクターNFTを販売して売却益を得る
- ゲーム中のバトルで敵を倒すと武器NFTをドロップする
- ゲームの報酬がNFTでもらえる
たとえば、DappRadarのブロックチェーンゲーム7位にランキングしているNine Chroniclesでは、ゲームをプレイして入手したアイテムはNFTとして売却可能です。筆者はこのゲームをプレイした際に、効率的に強い敵を倒すためにショップでNFTを購入しました。
ゲームの中では地道にレベル上げをしたり、アイテムがドロップするのを待つ時間が惜しい場合に、キャラクターを強化できるNFTアイテムを購入する機会が頻繁にあります。
資産性ミリオンアーサー
2023年7月にリリースされた「資産性ミリオンアーサー」は、そのNFT購入体験で画期的でした。このゲームは、スクウェアエニックスが開発し、LINE Blockchain上で展開されています。NFTシールの累計発行数は驚異の10万枚以上に達しています。
資産性ミリオンアーサーでは以下の機能を手軽に体験できます。
- 敵を討伐しアイテムを得て最終的にオリジナルシールNFTを生成、それをコレクションしたり、売買する。
- ゲームを迅速に進めるため、他のユーザーが出品しているシールNFTを購入する。
多くのユーザーは、NFTシールを生成する楽しさや、ゲームを効率よく進めるためにNFTシールを購入していました。これらのNFTシールは、「LINE NFT」マーケットプレイスでの取引が可能で、希少性を持つシールは数百万円での取引がなされることもありました。
価格はプレイヤー間の需給やシールの希少性に基づいて決まり、大きな注目を集めました。
「資産性ミリオンアーサー」の詳細については、以下のリンク先の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひ参照してください。
NFTを理解するためにすべきこと
NFTを理解するためにすべきことは下記の通りです。
- 実際に取引してみる
- ゲームでNFTアイテムを獲得してみる
- 信頼できるNFTインフルエンサーをXでフォローする
順番に見ていきましょう。
実際に取引してみる
NFTを深く理解するための最良の方法は、実際にNFTを発行し、また取引することです。NFTを保有するという経験を通じて、独特の感覚や価値を体感できます。
「保有する」とは、購入したNFTが自身のデジタルウォレット、例えばMetaMaskに格納されている状態を指します。NFTの購入方法は主に2つ考えられます。
- 仮想通貨取引所での取引を通じてウォレットに仮想通貨を蓄え、その後NFTマーケットプレイスで購入する方法。
- クレジットカード決済やLinePayなどの直接的な決済方法を使用してNFTマーケットプレイスで購入する方法。
方法1は、方法2に比べて購入に至るまでの手続きが煩雑ですので、迅速に取引を希望する方は方法2を選択すると良いでしょう。
方法1に興味をお持ちの方は、以下のリンク先の記事でNFTの購入方法について詳しく解説されていますので、ぜひご参照ください。
ゲームでNFTアイテムを獲得してみる
NFTを深く理解するには、ゲーム内でNFTアイテムを取得や購入する経験を試すことが効果的です。NFTアートに特別な関心がない方でも、ゲームを通じて収益を上げる体験は魅力的と感じるかもしれません。
例として、「Move to Earn」のゲーム「DEFY」は、拡張現実(AR)を取り入れた、ポケモンGOに似たゲームです。ゲーム内の地図上に表示される宝箱の位置へ歩行して移動することや、ドローンを操作することでアイテムを収集できます。
これらのアイテムはゲーム内のドローンの部品を製造する素材として利用されます。重要な点は、これらの素材もNFTとして存在し、外部のマーケットプレイスで取引できる点です。
ドローンをより効率的に完成させるため、マーケットプレイスで素材のNFTを購入する選択も考えられます。このように、NFTを取り入れたゲームは、ゲームを楽しみながらNFTアイテムの取引や利用を自然と学べるのが特長です。
信頼できるNFTインフルエンサーをXでフォローする
NFTを理解するために、XなどでNFTに詳しいインフルエンサーやNFTの最新情報を提供するアカウントをフォローするのも良い方法です。
おすすめは以下のアカウントです。(継承略)
おもち | omochi.eth
おもちさん(@omochibigaku)は「おもち美学」と呼ばれるNFTや仮想通貨に関する情報サイトを運営しています。
初心者が詐欺の被害に遭遇しないような知識やノウハウも提供しており、NFTを始めたい過多には特におすすめのアカウントです。
minn | NFT情報コレクター
minn(@NftPinuts)さんは、最新のNFT情報を積極的に発信しています。NFTの最新トレンドを把握したい方には、このアカウントが最適です。
大手企業とのNFTコラボレーションや、NFT関連のイベント情報など、豊富なトピックを取り扱っています。
paji.eth
pajiさん(@paji_a)は、Tokyo Otaku Mode共同創業者兼COOです。pajiさんは「汲めども尽きぬ知恵の泉」と形容されるほど、NFTやWeb3において非常に知識が豊富な方です。
Twitterでは、独自かつ洞察に富んだNFTの考察を発信しています。
初心者にとっては一部難解な点もあるかもしれませんが、フォローすることでNFTの最新動向だけでなく、NFTやWeb3の真の可能性を感じられるでしょう。
今後期待のNFT
今後スタンダードになる可能性となる期待のNFT事例を紹介します。
- LINE NFT
- クレジットカード決済NFT
LINE NFT
LINE NFTは日本国内でのアクセスが簡単で、利用者が急増しています。多数の日本人がスマートフォンを所持しており、その中でも大多数がLINEアプリを日常的に使用しているため、LINE NFTでの取引は容易に行えます。
LINE NFTでの取引手順は以下の通りです。
- LINEアプリ内のDOSI WalletやLINE Payを経由してLINE NFTにアクセス。
- LINEを通じてNFTを受領。
全ての手続きはLINE認証を利用して行われるため、セキュリティが確保されています。特筆すべき点として、LINE NFTでは取引時にガス代が不要であるため、「資産性ミリオンアーサー」のようなゲーム内での頻繁な取引でも、ガス代を気にせず楽めます。
現在のところ、LINE NFTはプライベートチェーン上に構築されており、他のブロックチェーンネットワークと直接接続はしていません。しかし、将来的にはイーサリアムなどのパブリックブロックチェーンとの連携も検討されているとのことです。
LINE NFTは日本のNFT市場でのリーダー的存在として注目され、その可能性は非常に大きいと言えます。多くのユーザーにとって、NFTへの入門としての役割を果たしており、今後の成長が期待されます。
クレジットカード決済NFT
従来はLINE NFTを除いて、NFTを購入するためには以下の5段階から成るハードルがありました。
- 仮想通貨取引所を開設
- MetaMaskウォレットの開設
- 仮想通貨を取引して購入
- 購入した仮想通貨をMetaMaskへ送金
- マーケットプレイスでNFT購入
しかし、現在上記のハードルを乗り越える必要なく、クレジットカード決済に対応しているNFTマーケットプレイスが多く登場しています。たとえば以下のマーケットプレイスがNFT取引に対応しています。
- OpenSea
- Rarilble
- X2Y2
- MagicEden
- 楽天NFT
- AdambyGMO(β版)
クレジットカードを使った直接的な購入方法によって、NFT購入におけるユーザビリティやアクセシビリティを大きく向上すると考えられます。
結果的に、一部の仮想通貨リテラシーがある人だけではなく、NFTや仮想通貨を購入したことがない人、これまで興味はなかった人がNFTを利用し楽しむようになるでしょう。
まとめ:NFTが本領を発揮するのはこれから
本記事では、NFTがオワコンと言われる理由、オワコンではない理由、NFTを理解するためにすべきことなどを解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- 仮想通貨市場の低迷に影響され、現在NFTは冬の時代と言われている
- PFP NFTのバブルが弾けた
- 技術としてのNFTに注目が集まっている
- ブランド企業を始め、様々な企業がNFTの活用を進めている
- NFTを理解するには実際取引してみることが大切
- ゲームが好きな人はNFTアイテムを売買してみることがおすすめ
NFTのテクノロジー自体はまだまだ成熟の途中です。短期的な市場の動きやバブルの崩壊をもって、オワコンとしてしまうのは少し早いかもしれません。
NFTが本領を発揮し始めるのはこれからと考えて、ぜひ様々なNFTサービスに触れてみてください。