Web3サービスを提供したり、NFTを販売したりするときに障壁となるのは、コントラクトを作成しなければならない点です。
コントラクトを作るにはSolidityのような独自のプログラム言語を学ばなければならないため、諦めてしまうのも無理はありません。
しかし、ソースコードを書かずにコントラクトをデプロイできるサービス「thirdweb」を使えば、自分のNFTやWeb3サービスを簡単に作成できます。
この記事では、thirdwebの概要やメリット、使い方などを解説します。
✅thirdwebで用意されているテンプレートを使えばノーコードでWeb3コンテンツを作れる
✅作れるコンテンツは、NFTコレクションやトークン、マーケットプレイス、DAOなど
✅SDKが用意されており、既存サービスをWeb3向けに展開することも可能
初心者から現役開発者まで幅広く利用できるサービスなので、Web3でコンテンツを提供するのであれば本記事を読んでみてください。
thirdwebとは?
(thirdweb)
thirdwebは、分散型ネットワークで動作するWeb3コンテンツを作成するための開発ワークフレームを提供するサービスです。
オープンソースで公開されているコントラクトやSDKは、誰でも無料で利用できます。
また、thirdwebを利用して作られたコンテンツの所有権は作成者となるので、独自コントラクトのサービスやNFTを作成できる点も特徴。
7万人以上のWeb3開発者が利用しており、デプロイ(展開)されたコントラクトの数は25万を超えています。
テンプレートでノーコード作成が可能
専門的な知識がなくても、テンプレートを選択して必要項目を入力するだけでコントラクトを作成できます。
テンプレートの種類は豊富にあり、NFTコレクションやミントサイト、マーケットプレイスなどを簡単に作成することが可能です。
「Audited」と書かれているテンプレートはmacro社のスマートコントラクト監査に合格しているので、安心して利用できるでしょう。
なお、テンプレートを使用せずに、ContractKitを利用して独自のコードを書くことも可能です。
700以上のEVMチェーンに対応
2023年2月24日のアップデートにより、Solanaネットワークも含めた700以上のEVMチェーンに対応できるようになりました。
つまり、メタマスク(MetaMask)が対応しているチェーンであればコントラクトを作成できる、と言い換えられます。
もちろんテストネットも利用できるため、本番環境にデプロイする前に試すことも可能です。
thirdwebで利用できるブロックチェーンは公式のChainlistページで確認できるので、コンテンツを作成したいチェーンが対応しているかチェックしてみてください。
(参考)thirdweb|Chainlist
2400万ドルの資金調達に成功している
2022年8月、thirdwebは2400万ドル(約33億円)の資金調達に成功しました。
資金を提供したのは、Kathryn Haun氏が立ち上げたベンチャーキャピタルであるHaun Venturesが率いている以下の企業です。
・Coinbase Ventures
・Shopify
・Polygon
・Protocol Labs
・Shrug VC
・Joseph Lacob
なかでもCoinbaseとShopifyはパートナーシップを提携しており、それぞれのサービスに関連したソリューションが公開されています。
thirdwebを利用するメリット
Web3コンテンツをノーコードで作成できるサービスはthirdwebだけではありません。
例として、Fair.xyzやNFTifyなども挙げられるでしょう。
それらのサービスと比較して、とくにthirdwebが優れている4つのメリットを紹介します。
コントラクトの種類が豊富
thirdwebの大きな魅力の1つに、テンプレートで作成できるコントラクトの豊富さが挙げられるでしょう。
2023年3月時点で利用できるテンプレートは20種類以上あり、今後も定期的に追加される予定です。
テンプレート検索では、人気のあるコントラクトとして以下のテンプレートが掲載されています。
コントラクト名 | 説明 |
NFT Drop | 独自のNFTコレクション(ERC721)を販売する |
Marketplace | ERC721またはERC1155のNFTをマーケットプレイスで売買する |
Membership | 有効期限付きのメンバーシップNFTを作成する |
Edition Drop | 大量に作成できるNFTトークン(ERC1155)を販売する |
Token | 代替可能な仮想通貨(ERC20)を作成する |
StakeERC721 | NFT(ERC721)をステーキングすることで仮想通貨(ERC20)を得られるサービスを構築する |
上記以外にも、トークンのエアドロップを作成したり、DAOを構築したりすることが可能です。
SDKでブロックチェーンを導入できる
すでにサービスやアプリを開発・提供しているのであれば、SDK(=開発キット)を利用してブロックチェーンを導入できます。
ほかのサービスではWeb3サービスを1から新規作成するため統合が難しいですが、thirdwebを利用すれば既存サービスをブロックチェーンに移行させやすいでしょう。
たとえばオンラインショップを運営している場合、数行のコードを記述してNFTを販売できるようにすることが可能です。
SDKが下記のプログラム言語に対応しているため、多くのWebサービスやアプリに導入できます。
・javascript
・React(React Native含む)
・TypeScript
・Python
・Go
・Unity
自分でデプロイするよりガス代が安い
thirdwebのテンプレートを利用してデプロイする場合、自分でおこなうよりガス代を安く済ませられます。
なぜなら、大半のコントラクトで同じになる部分を除いてデプロイすることにより、ガス代の対象となるソースコードの量が少なくなるからです。
とくにガス代が高くなりやすいイーサリアムなどでデプロイする際は、thirdwebを使って費用を抑えるとよいでしょう。
無料でIPFSストレージを利用できる
thirdwebにはIPFSストレージが用意されており、無料で利用することができます。
IPFSとは分散型のファイル保管サービスで、NFTの画像データなどの保存先として利用されることが多いです。
ストレージの使用量によって料金が発生することはないので、NFTを作成する際にはthirdwebのIPFSストレージを利用するとよいでしょう。
thirdwebの使い方
ここでは、thirdwebの使い方を具体的に解説していきます。
実際に作成するときに必要なものも併せて解説するので、ここで紹介する手順を進めていけばゼロからWeb3コンテンツを作成できるでしょう。
なお、例ではNFTコレクションの作成する流れを見せていきますが、テンプレートが存在するのであればNFT以外でも同様に作成できます。
マーケットプレイスやDAOを作りたい場合でも、以下の手順を参考にしながら実際に触ってみてください。
デプロイするブロックチェーンを決める
まずはデプロイするブロックチェーンを決めるとよいでしょう。
デプロイしたコントラクトはブロックチェーンを変更できないので、作り直しにならないようよく考えて決めてください。
ブロックチェーンを決めたら、そのチェーンが対応しているかどうかChainlistで検索します。
もし検索して見つかったブロックチェーンに緑色のチェックマークが付いていない場合、チェーンの詳細画面にある「+Add Chain」ボタンを押して追加してください。
また、デプロイする際にはガス代を支払うため、本番環境に作る前にテスト用のブロックチェーンを利用しましょう。
ガス代を用意する
thirdwebでコンテンツを作成し始める前に、デプロイ時にかかるガス代を支払うぶんの仮想通貨を用意しておきましょう。
イーサリアムのガス代推定ページがあるので、こちらのページを参考にしつつ多めに用意してください。
ちなみに、本番環境で使う仮想通貨は取引所で購入できますが、テスト環境で使う仮想通貨はFaucet(蛇口)で入手できます。
たとえばイーサリアムのテストネットであるGoerliのETHは、alchemyのfaucetページなどで取得できます。
Solanaのテスト用通貨のfaucetはthirdweb上で提供されているので、こちらのページからリクエストしてください。
利用するコントラクトを選択する
準備が整ったら、thirdwebにウォレットを接続し、利用するコントラクトのテンプレートを探します。
サイト上部のメニューから「Explore」を選ぶと、選択できるテンプレートの一覧が表示されます。
「NFTs」や「Marketplaces」などのカテゴリ別に表示されるので、作りたいコンテンツに関するカテゴリから適切なものを選びましょう。
テンプレートを選択すると、機能の概要やコントラクトのコードを確認できます。
必要事項を入力してデプロイする
テンプレートの詳細画面にある「Deploy now」ボタンからデプロイを実行します。
コントラクトの名前や使用するブロックチェーンといった項目に情報を入力してください。
最下部の「Deploy Now」ボタンを押して、ガス代を支払ったら、選択したブロックチェーン上にコントラクトがデプロイされます。
デプロイが完了したコントラクトは「Contracts」タブの「Deployed」に追加され、選択するとコントラクトの詳細・設定画面が表示されます。
デプロイしたコンテンツを公開する
デプロイした時点でコンテンツはブロックチェーン上に存在するので、ホームページやSNSなどを利用して公開しましょう。
NFTコレクションであれば、OpenSeaなどのマーケットプレイスに申請して販売することも可能です。
コントラクトの詳細画面で正しく設定できているかを確認したうえで、コントラクトアドレスや埋め込みコードをコピーして利用してください。
SDKでできること・使用例
ノーコードで作成したコントラクトだけでもNFTの販売などは簡単に実現できますが、より高度なWeb3サービスを作る際にはSDKを利用しなければならないでしょう。
具体的にSDKを使って実現できることを、使用例を含めて4つ紹介します。
ソースコードを書き換えるため専門的な知識が必要となりますが、一般的なサービス・アプリを作成するエンジニアがいれば導入できるはずです。
以下の例を見ながら、Web3を導入するアイデアを考えてみてください。
ウォレット接続の導入
UIコンポーネントを利用することで、ウォレット接続ボタンを追加できます。
たとえば、通常のログインボタンの代わりにウォレット接続ボタンを置けば、ウォレット認証によるログインを実現できるでしょう。
Web3サービスを提供する以上、ウォレットの接続は必須となる機能です。
既存のWebサービスにブロックチェーンを導入する第一歩として、ウォレット接続ボタンの設置から始めてみてください。
Eコマースサイトの作成
CommerceKitを利用すれば、NFTを販売できるEコマースサイトを作成できます。
ノーコードでもNFTのマーケットプレイスを作れますが、SDKを活用すれば物理アイテムとNFTをセットで売るといった販売方法が実現しやすくなるでしょう。
また、Shopifyで作成した既存のストアと統合するツールも提供されています。
Shopify経由であれば法定通貨を使った売買もできるので、仮想通貨を持たないユーザーにも販売することも可能です。
ブロックチェーンゲームの開発
thirdwebが提供するGamingKitによって、Unityというツールを利用したWeb3ゲームを開発できます。
Unityはゲーム開発において定番のツールで、Unityを使って開発されたアプリのダウンロード数は毎月50億を超えています。
パソコンやスマートフォンなどのプラットフォームを問わず開発できるので、Unityを使える開発者がいればブロックチェーンゲームも問題なく作れるでしょう。
なお、Unityはゲーム開発のために作られたツールですが、3DシミュレーターやVR・ARアプリの開発など幅広く利用できます。
これからアプリの開発をするのであれば、Unityの導入も検討してみるといいかもしれません。
NFTやIPFSのレンダリング
NFTやIPFSからメディアデータを取得して描画する機能(レンダリング)も、SDKを利用して実現できます。
対応しているメディアデータは、画像や動画、オーディオファイル、3Dモデルなどです。
ユーザーが所有しているNFTを表示したり、美術館のように展示したりする使い方が考えられるでしょう。
まとめ:Web3へのサービス展開におすすめ
スマートコントラクトについて詳しいエンジニアがいなくても、thirdwebを利用すればWeb3コンテンツを短時間でデプロイできます。
SDKを利用して、既存のサービスやアプリにWeb3を導入することも可能なので、すでにコンテンツを提供している開発者にもおすすめです。
無料で使い始めることができ、デプロイにかかるガス代も節約できるthirdwebは、まさにWeb3開発の決定版。
EVMブロックチェーンでのWeb3展開を検討しているのであれば、ぜひthirdwebに触れてみてください。
また、独自コントラクトのNFTを作成してミントサイトで販売したい方は、こちらの記事も参考にするとよいでしょう。