今回は、トルネードキャッシュ(Tornade Cash)の開発者が逮捕された事件について、その概要から背景まで徹底的に解説します。

仮想通貨のプライバシー保護を目的としたトルネードキャッシュは、2019年にリリースされました。

そんなサービスの開発者がなぜ、2022年になった今逮捕されてしまったのか。本記事を読めば、トルネードキャッシュの欠陥が理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。

ザックリ要約!

✅トルネードキャッシュは、ミキシングを活用して仮想通貨取引に匿名性をもたせるサービス

✅匿名性をもたせる一方、その機能を悪用するユーザーも一部いる

✅OFACは、トルネードキャッシュを通して行われた資金洗浄はこれまでで9,300億円以上にのぼると報告

✅トルネードキャッシュだけでなく、その他の企業にも事件の影響は広がった

はじめに:トルネードキャッシュとは?

最初に、トルネードキャッシュのサービス自体について簡単に解説しておきます。

前述したように、トルネードキャッシュは仮想通貨のプライバシー保護サービスで、「ミキシング」という技術を活用して運営されています。

ミキシングとはいくつかの取引データを混ぜ合わせることで、ユーザーの取引データが匿名化し、プライバシーを保護する技術です。

(​​通常、すべての仮想通貨やNFTの取引はブロックチェーン上で改ざん不可能な記録として残り、これまでの取引履歴が世界中に公開されています。そのため、1つの個人アドレスがわかってしまうだけで、その人のこれまでの仮想通貨・NFTの取引データ(アカウント残高や取引金額、日付など)が丸見えになってしまいます。)

そんな技術を活用したトルネードキャッシュですが、このような良い面ばかりではありません。取引の匿名性を高めることでプライバシー保護を推進する一方、マネーロンダリングといった資金洗浄に活用されるリスクがあるからです。

例えば、人気NFTゲームの「Axie Infinity」は過去に北朝鮮のハッカー集団に仮想通貨をハッキングされ、トルネードキャッシュを使った資金洗浄に利用されました。その額は700億円を超えると言われています。

トルネードキャッシュの取引は匿名性が高いため、一度取引が行われると、それを取り返すことができないという欠点もあります。

このような事件が起きること自体も問題ですが、それを解決する術がないというのはより深刻な問題と言えるでしょう。

このように、トルネードキャッシュはユーザーのために匿名性を高めるサービスである一方、それによる危険性もはらんでいることがわかりました。

次に、具体的なトルネードキャッシュの開発者が逮捕された背景について解説していきます。

トルネードキャッシュの開発者が逮捕された事件の背景

ここからは、トルネードキャッシュ事件について解説していきます。この事件は先ほどご紹介したデメリットが影響したものです。

と言うのも、マネーロンダリングに使用される危険性のあるトルネードキャシュですが、本サービスがリリースされてから現在までで合計9,300億円以上ものお金がマネーロンダリングに使われたと発表されたのです。

発表は米国財務省外国資産管理局(OFAC)による正式なもので、その後2022年8月8日、トルネードキャッシュを制裁対象者リストに指定。また、同サービスに関連するイーサリアムアドレス38銘柄と6つのUSDコインアドレスも制裁対象者リストに追加されました。

>>発表された際の本文はこちら

その結果、8月12日にオランダ当局(FIOD)はトルネードキャッシュによる違法な資金洗浄を隠蔽し、マネーロンダリングを助長する犯罪に関与したとして、開発者だった29歳の男性を逮捕したと伝えました。

このニュースの公表は、世界中の仮想通貨ユーザーに戸惑いを生む結果となりました。なぜなら、サービス自体の開発とサービスが悪用された犯罪とのギャップがあまりにも大きいからです。

「この理論が成立するなら、オレオレ詐欺に使われているという理由から、電話の開発者を逮捕するのか」と考える人も少なからずいるでしょう。

また、トルネードキャッシュ事件はこれだけでは終わりません。アメリカ国内にある、もしくはアメリカ人が保有するトルネードキャッシュ上の財産が全て凍結され、OAFCに報告されることになりました。さらに、この制裁措置に対してアメリカの大手企業も対応に追われました。

オンラインコミュニケーションツールを提供する「Discord」は、トルネードキャッシュの関連アカウントを削除。大手NFTマーケットプレイスの「Opensea」は、過去にトルネードキャッシュを利用したことのあるアドレスによるサービスの利用を禁止しました。

以上が、トルネードキャッシュ事件の概要でした。次に、本事件が与えた別方面での影響について解説していきます。

トルネードキャッシュ事件による影響

ここからは、トルネードキャッシュ事件による他方面への影響を解説します。

事件後、ある匿名ユーザーがトルネードキャッシュを使って数々の著名人のイーサリアムアドレスにイーサリアムを送信するという事態が起きました。

送信されたイーサリアム自体は少額でしたが、先ほども述べたとおり、トルネードキャッシュに関連するだけでOFACの調査対象になってしまいます。そして最悪の場合、ルール違反になってしまう恐れがあります。

更に厄介なことに、ブロックチェーンの仕組み上、受取側の人間は仮想通貨の送付を拒否することができません。そのため、制裁リスクのある資金を強制的に受け取らざるを得ない状態に置かれてしまいます

その対象者は幅広く、コインベースのブライアン・アームストロングCEOやTV司会者のジミー・ファロン氏、スポーツブランドのPUMAなどが挙げられます。

このように、トルネードキャッシュ事件に関連して、他の人にも被害が広がってしまっているのが現状。今後もトルネードキャッシュについては注目しておく必要があるでしょう。

今後の「仮想通貨×プライバシー保護」

次に、トルネードキャッシュ事件後の「仮想通貨×プライバシー保護」について考えていきたいと思います。

トルネードキャッシュ事件があり、仮想通貨やNFT取引における「匿名性」を問題視する声が大きくなっています。そのため、これからの仮想通貨におけるプライバシー保護やミキシングサービスのあり方が議論されていくでしょう。

実際、今回の制裁措置を受けて仮想通貨シンクタンクの「Coin Center」も異議を唱えています。その内容を以下にまとめたので、ご覧ください。

「OFACの制裁リストに指定されるものは通常、国家的な脅威となる「人物」ですが、今回の制裁対象となったトルネードキャッシュは人間ではなく「ツール」でした。

そして、ツールというものは、どんなものであっても中立的な性格を持っています。つまり、利用者によって良い使い方も悪い使い方もできてしまうということ。

それなのに今回の措置ではツール自体に対する制裁であるように思われるため、実際にツールを悪用した犯人ではなく、トルネードキャッシュの良い使い方をしたアメリカ国民が被害を被っています。」

このようなツール・技術に対する規制は、その分野の進歩を止めてしまう原因にもなります。そのため、今後の仮想通貨取引におけるプライバシー保護については注視しておく必要があるでしょう。

まとめ:仮想通貨の規制整備はまだまだです

今回は、仮想通貨に関連した取引におけるプライバシー保護サービス「トルネードキャッシュ」の事件についてまとめました。

仮想通貨の世界では、1つの個人アドレスが漏れてしまうだけで全ての個人情報が抜き取られてしまう恐れがあるなど、ユーザーとして利用しにくい部分があります。

その解決策としてトルネードキャッシュは救世主のような形で現れましたが、結果的には今回のような悲劇を招く結果になってしまいました。

ただ、今回の事件を機により「仮想通貨×プライバシー」という観点について考えるきっかけになると思うので、皆さんご自身の中でも咀嚼していただければ幸いです。

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